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Yatsugatake Kogen Salon Conert       [コンサートの記憶]

鈴木優人 チェンバロ・リサイタル
        ~八ヶ岳高原音楽堂

(プログラム)
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻(全曲)




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高原の爽やかな空気
新緑の木々の梢で
鳥たちがさえずる

明るい光が差し込む音楽堂
カラマツで作られたという楽器が
美しく鳴り響く。。


演奏する優人さんは
24のプレリュードとフーガという長大な曲集だというのに
全く気負いなく
楽譜を携えて ふいっと現れ
もう、1番のプレリュードを弾きはじめている。


明るく、のびやかなハ長調が終わると 少しお話。
「・・24のお話が集まる、アンソロジーのような曲集です。
それぞれの物語を想像しながら、リラックスして聴いてください。
さあ、旅を始めましょう・・」



旋律は彩り豊かに紡がれ
さまざまな物語が綴られる

紀行、歴史、哲学、詩 そして祈り。。
聡明な語り部に導かれる心躍る旅路。

こんな贅沢な時間が
他にあるでしょうか?


優人さんが言った通り、「平均律」に「難しい」というイメージがあるのは
ピアノのお稽古で四苦八苦した思いがあるから。
バッハの声楽や管弦楽の作品をほとんど聴いたことなく
楽譜と対峙するのは、とても大変でした。
だから、全曲を聴くのは身構えてしまう。

けれど、優人さんが弾くバッハは雄弁で、繊細。
難解な譜づらから解き放たれて
様々な風景を楽しむことができる。



実は
優人さんは深い洞察力を持って楽譜を読み込んでいて
全てを俯瞰し、高い演奏技術で演奏している。

例えばフーガの声部が複雑に絡み合っても、
それぞれの旋律が明瞭に聞こえる!
アーティキュレーションは
オーバーレガートとノンレガートを巧みに使い分けて
多彩な表情を描いていく。


子どもの頃から浴びるように聴き、演奏してきたバッハの音楽・・
それこそ声楽曲、管弦楽曲、パイプオルガンと網羅しているから
鍵盤のために書かれた作品でも
様々な楽器の音色や声、そして演奏形態を容易に想像できるのでしょう。

まるで指揮をするように操られるチェンバロ。
奏者が思い描いた物語が
夢のように花開く。。









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ロシア人ピアニストのリヒテルの提案で建てられたというこのホールは
大自然に調和し、カラマツ材がふんだんに使われた、ほんとうに豊かな響きのホール。
ここで催された数多くの演奏会の企画をリヒテルと武満徹が助言したという。

それを知った優人さんは
演奏会のサブ・タイトルを「リヒテルへのオマージュ」に。
自分自身がリヒテルに影響を受けたと語る優人さん。
この日のチェンバロの響きを、リヒテルも聴いているに違いない。



ピアノの音よりもチェンバロのそれは、すぐに減衰してしまう。
曲を弾き終わると聞こえてくる鳥たちの鳴き声。
リハーサルをしていると、鳥が褒めてくれているようだった、と優人さん。




最後は短調の長大なフーガ。

鳴り止まない拍手に呼び戻され、アンコール!

重々しい曲の後に演奏された
この曲集の冒頭のプレリュードは
透明な水のような清らかさ。

それが終わり、なんと続けて次のフーガを弾き始めた?!
と思ったら、すぐに弾くのを止めた笑顔の優人さんです。
あー、ビックリした!
もう一周するのかと思ったww







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CDを購入したらサインを頂きました。
サインはこの音楽堂のポストカードに書かれていました!
最近はサイン会がないので、予め準備されていた物ですが
これは記念になりますね♡









































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SPRING2021 DON QUIXOTE [カーテン・コールの後に]

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY
ドン・キホーテ
       ~オーチャードホール

(キャスト)
キトリ:小林美奈
バジル:堀内將平
エスパーダ:栗山廉 


指揮:井田勝大
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー



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キトリが本当に空中を飛んだ!
と驚くほどの美しいリフト。
さらにステキな振り付けと
数々のハイレベルなパフォーマンスに釘付け!

加えて、ストーリー展開の楽しいこと!
ドン・キホーテ、サンチョ・パンサのユーモラスな演技が笑いを誘い
美しい男女の恋物語が浮き彫りになります。

そしてセンスの良い衣装、重厚な舞台装置。
録音ではない生のオーケストラの臨場感。
などなど細部にいたるまで
Kバレエの監督、熊川哲也さんのこだわりが。。


まさに、バレエは総合芸術!
それを思い出させてくれた、素晴らしい公演でした。
















































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OZONE60 in MITO      [コンサートの記憶]

小曽根真 60TH BIRTHDAY SOLO
         ~水戸芸術館 コンサートホールATM


(セットリスト)
Makoto Ozone:Gotta Be Happy
        Struttin' In Kitano
        Departure
        Need To Walk
Mozart:小さなジグ K.574 G-dur
Prokofiev:ピアノソナタ 第7番「戦争ソナタ」より第3楽章 Op.83

Ravel:ピアノ協奏曲 G-durより 第2楽章
Makoto Ozone:The Puzzle
        Listen..
        O'berek.
        For Someone

(アンコール)
Makoto Ozone:Always Together



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ここは ソロアルバムを収録したホール。
やわらかな空気。
自然な残響。
それは奏者の耳に心地よく
気負わずに音楽と向かい合える。。

だから
聴く者も心をひらいて
一度きりの音楽の時間をだきしめる。


ピアノは様々な国の言葉で歌い、物語を紡ぐ。

幸せな夢、シリアスなドラマ、日々の営み。。
まるで映画を観るように繰り広げられる音楽!

まさに
ベストパフォーマンス!!




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ほんとうに、この日の小曽根さんは
まるでホームに還ってきたようにリラックスして
のびのびと弾いていた。

音の一つ一つに心が込められ
見事なバランスでハーモニーが奏でられる。
そして
メロディーは いつのまに登場したのか
ヴォーカリストが歌っている・・と思うほど
たとえば
ブルースからは英語が聞こえてくる。
グラスが触れあう音がするライブハウスで
マイクを握って熱唱するのはベテランのシンガー?


Listen...は 日本語の子守歌。
懐かしい記憶の中の風景。。

そしてポーランド語で歌われるO'berek!
この曲は、今までリズムにとらわれてしまい
何故これがオベレクなのか、実は良く解らなかった。
でも、この日は言葉のニュアンスが伝わってくるように
ポーランド語なんて話せないのに
不思議なことに、心にストンと落ちた。。



そして、もちろん器楽的に演奏される作品もある。

モーツァルトの可愛らしく飛び回る
妖精の笑顔。

そしてプロコフィエフは
恐ろしくピアニスティックに楽器が鳴り響く!
その中に ふと現れる音楽的な表情の見事だったこと。
もう、口をあんぐり開けてしまいましたよw




嬉しかったのは、サントリーホールで聴けなかった
Departure が聴けたこと。
それは 旅立つ時の不安?
ざわざわと落ち着かない心
それでも その時は容赦なくやってくる。。

そしてラヴェルも!
やわらかな音色が
高く低く静かにそよぎ 
ゆるやかに弧を描くとき
すべてが許され
幸福感にみたされる。。



セットリスト最後の For Someone は
間合いをじゅうぶんにとって
ホールの響きを確かめるように弾かれる。
その音のゆくえを
小曽根さんと一緒に聴く。
なんて幸せな瞬間だろう。

最後の一音の響きが
彼方に行ってしまった後の
長い長い静寂を
私は決して忘れない。。







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この日の小曽根さんは
前半は赤、後半はシルバーのシャツ。
めずらしく靴のヒモが緩んでしまったそうで
二度ほど結び直していましたw
足でリズムを刻むからね。

その数日後、ラジオで角野隼斗さんが生演奏をする時に
アナウンサーが「靴を脱いで靴下でペダルを踏んでいますっ」
と実況していました。
小曽根さんも靴を脱げば良かったですね(え?

その翌日、別のラジオ局で小曽根さんと角野隼斗さんが対談。
若い音楽家の角野さんに、小曽根さんが語りかける言葉のあたたかかったこと!
小曽根さんの自作曲「クリスタル・ラヴ」のエピソードには私も涙が。。

そしたらっ
その翌日、角野隼斗さんはYTライブで
さりげなく「クリスタル・ラヴ」を弾いているじゃありませんか。

こんなふうに
音楽と、そして大切なものが伝わっていくって すてきだ。
それを目撃して ふふ、、と微笑んでしまう。
永遠の愛。。



























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