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Leipzig Recital        [コンサートの記憶]

ラン・ラン「ゴルトベルク変奏曲」
       ~ライプツィヒ・聖トーマス教会



楽曲を深く隅々まで吟味した上で
ピアノによる表現を追求した演奏に心を打たれる

それぞれの変奏の
色合い、感情、時の流れの移ろいの愛しさ

終曲のアリアに還り着くまでのドラマティックな旅。。





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ラン・ランはポリフォニーの全てのフレーズを
大切に聴き、奏でる。
たとえば弦楽器のように柔らかく。

平均律の楽器で弾くと避けようのない音の濁りは
ダイナミクスとアーティキュレーションを巧みに変化させ
美しい響きを導き出す。
まるで、ピアノを想定してかかれた楽曲のように。

けれども、元々が2段鍵盤のチェンバロのための作品なので
テンポの速いものをピアノで弾くのは困難なはず。
しかしラン・ランは手を交差させ
そのずば抜けた指さばきで
いとも簡単そうに軽やかに奏でる。

変奏曲ひとつひとつのキャラクターは
無限ともいえるタッチを駆使し
音色を変化させて描き分けていく。
その見事なこと!

そして、それらが連なって
大河のような物語があらわれる。

物語の語り部であるピアニストは
身体全体を使って音楽を表現する。
まるで役者のように!

深い洞察とともに読み込まれ
咀嚼された音楽は
彼の心からの自然の発露のように
ピアノを通して語られる。
もちろん暗譜で。
聴く者はドラマを観ているように
そのストーリー展開を固唾をのんで見守る。

そこには、バロックの次の時代
古典からロマン派さえも予感させ
遠い未来の近代の香りさえもただよう。


'20Nov LangLang1.jpg




ラン・ランは「ゴルトベルク変奏曲」の録音をするにあたり
何年もかけて楽譜を読み込み
バッハを研究する演奏家達に教えをあおぎ
さらにはバッハの足跡を辿るなど
様々なアプローチで研鑽を積んできたそうです。
そうして到達したのは
装飾音など、時代の様式を損なうことなく
バッハが定めたフォルムの中で
自由にピアノを歌わせ、響かせる
彼ならではの演奏でした。


リリースされたCDはスタジオでの録音の他に
今年3月の演奏会の録音がセットになっていると知り
その演奏会ならDVDで観たい!と思いました。
その思いが通じたのかw
なんと、レコード会社が映像を配信してくれたのです!!
もちろん有料ですが、これを観ないでどうするっ!
だって、ラン・ランの演奏は身体の動きも音楽の一部なのだから。

そして何より、以前に訪れたことのある聖トーマス教会での演奏会だもの。
現地の空気を知っていると、たとえ配信でも
心はそこに飛んでいくことが出来る。


ラン・ランが演奏するピアノは
バッハが眠るお墓の前に置かれ
満場の聴衆が耳を傾けている。。





'20Novランラン3.jpeg



それにしても、どんどん集中力が増していくのは凄かった。
フランス風序曲で始まる第16変奏からの後半は
まるで憑依したかのような演奏に!

短調の変奏曲は歌詞があるかのように
せつせつと奏でられる。
ゆるやかな、夢のような時。。

そして第29変奏は
コンチェルトさながらに豪快にピアノを鳴らす!
そこからクオドリペットになだれ込むと
自由を謳歌する歌が生き生きと歌われる。

終曲のアリアは静謐に。
最弱音が空気にとけていく。。









































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