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ミーントーンの歌                 [コンサートの記憶]


古いピアノは

遠い昔の歌を歌う

仄かな灯りのような

密かな声で。。



ピーター・ゼルキン(ピアノ)
          ~トッパンホール



(プログラム)
チャールズ・ウォリネン:ジョスカンの「アヴェ・クリステ」
スウェーリンク:カプリッチョ
ブル:ドレミファソラ/ジグ
ダウランド(バード編):涙のパヴァーヌ
バード:ラ・ヴォルタ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K310
レーガー: 「私の日記より」 Op.82より 第1巻 第5番・第2番、第2巻 第10番
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971

(アンコール)
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988より アリア
J.S.バッハ:3声のインヴェンションより 第5番



何というプログラムでしょう!
古い時代のポリフォニー音楽が大半を占めているではありませんか。
それを、ミーントーンで調律されたスタインウェイで弾くのです。
それも大変に古い楽器だそうで、側面がツヤ消しになっていました。

演奏が始まると、響きが非常に少ないことに驚かされます。
現代のピアノ、特にコンサートピアノは本当に良く響くように作られているのですが
この楽器はフォルテピアノの音色にそっくりです。

そして、ミーントーンの調律はポリフォニーの曲を弾くのに良く合っていて
例えば この曲。

スウェーリンク「カプリッチョ」



特に 冒頭の半音階で下降するところなど、この調律ならではの音が聴けました。



そして、ブル「Gigge」



こういうリズミカルな曲を実に楽しそうに弾くピーター・ゼルキン。

つまり、ルネサンスの声楽曲や合奏曲をピアノ用に編曲してあるのです。

ピアノという楽器がなかった時代の音楽が
ピアノで表現された、唯一無二の演奏でした。





けれど、ベートーヴェンとモーツァルト。
何故か 必ずどこかに引っ掛かりがある。
清流はさらさらと流れるけれど、笹舟は真っ直ぐに進まず、
岩にぶつかって回転したり留まったりするように。

そうやって 少しずつ不可思議な気持ちが積み重なっていく。
けれど最後!
イタリア協奏曲の第3楽章で疾走し、
光の中に舞い上がった!

全ては、この瞬間に向かっていたと思える演奏。
なんと考え抜かれたプログラムでしょう!

アンコールのバッハ2曲もこの人ならではの
ポリシーに溢れた演奏でした。

'15Sptゼルキン.jpg










でもね、こーんなにポリフォニーがステキなのに
ベトベンやモーツァルトでフォルテを弾く時の異常なほどの力の入れ方が謎w
響きのないピアノだから、力むと余計に鳴らない(汗)
鳴らないピアノのせいなのか、ペダルも大杉で惜しいなあ。
それと、鍵盤にかけるビブラート。
もしかして本当にビブラートしているのかしら?と思ったけど、してないよね~



彼の名誉のために・・
ピーター・ゼルキンは現代音楽の演奏を得意とするそうです。
実際、レーガーの演奏はとても高い技術で弾かれていましたよ。


それにしても、ポリフォニーの曲をピアノでどう弾くかというのを
私もずいぶん考えていますが、なかなかに難しい。
今回はピーター・ゼルキンの答えが聴けた事が本当に嬉しかった。






































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