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生きる喜び         [響きのゆくえ]

『ジョワ・ド・ヴィーヴル』のつくりかた

   話し手:鈴木優人(『ジョワ・ド・ヴィーヴル』アーティスティック・ディレクター)
   聞き手:田中泰 (クラシックソムリエ)


・・ピアノは平均律で調律されているので、長3度の幅が広いのです。
これは、倍音を聴くと良くわかります。

真ん中のミの鍵盤を、音を出さないようにそっと押さえ
2オクターブ下のドを弾くと、倍音のミがかすかに鳴ります。
これは、実際にミの鍵盤を弾いた時の音よりも ほんのわずか 低いのです。。





鈴木優人さんがアーティスティック・ディレクターをつとめる、
東京芸術劇場 開館25周年記念コンサート「ジョワ・ド・ヴィーヴル」のレクチャーでした。

プログラムの内容を語ってくれたのですが、
案内役の田中泰さんが振ってくれたおかげで優人さんの幼少の頃のお話から始まって学生時代の事、
そして勿論
曲のこと、出演者のこと、本当に沢山のお話が聞けました。
(ちなみに、田中泰さんは とってもダンディーな方です♪いつもラジオで聞く声もステキなのですが、
声と姿は比例するのでしょうか!)

優人さんが携帯の着信音に使っていた(昔の携帯は自分で音楽が打ち込めた)という
オリヴィエ・メシアン「トゥーランガ リーラ交響曲」。
プロジェクターに映し出された楽譜を見ると、長大で大変に難解な音楽のようですが
優人さんが聴きどころを楽しそうに話してくれると、
とてもワクワクしてしまいます。



実は、優人さんはこの日にオランダから来日したばかり。
(オランダに住んでいるので「帰国」ではない)
飛行機の中で楽譜を読んでいた、というより本当に指揮をしていたらしいw
これこそホントのエア指揮!
「空気を飛ばしていました」と言ってましたが(シュ!シュシュ!)
飛行機の中は集中できる空間なのだそうです。

この曲が2部の最後になり、曲名の通り「愛」を表します。
その前に吹奏楽で2曲。
これを演奏するのが若い音楽家たちなので、未来への「希望」。
さかのぼって1部はパイプオルガンと合唱の演奏会で「祈り」。

つまり「祈り」「希望」「愛」の3章からできているのです。


タイトルの「ジョワ・ド・ビーブル」(生きる喜び)は
「音楽を通して『生きる喜び』を伝えたい」という思いから名付けたのだそうです。
ルネサンスから現代音楽までを網羅したプログラムの全てを聴くと
音楽の移り変わりを体感することができます。


この劇場は3種類(ルネサンス、バロック、モダン)のパイプオルガンがあり
それぞれが違ったピッチで調整されているため、様々な時代の曲が演奏できます。
そこで、冒頭の音律から倍音の話になったのです。
そうそう、どんでん返しのように回転して
別のパイプオルガンが現れる様子は圧巻です!


合唱は24人の歌い手がさまざまなフォーメーションで歌い、
1人のコンテンポラリー・ダンサーが加わります。
合唱曲にはさまれて、優人さんのパイプオルガン即興演奏もあるとのこと。
耳も目も、五感の全てを駆使して祈りのステージを感じたいですね。

ところで、プログラムが決まった後に優人さんはスゴイ事に気付きました。

第1部の最後の曲 J.S.バッハ「我ら苦難の極みにあるときも」BWV641 は
「ソ(G)」で終わりますが、オルガンのピッチが半音低いので
実際には「ファ#(Fis)」が聞こえます。
第2部のストラヴィンスキー「火の鳥」はロ長調=主音が「シ(H)」
そして最後のトゥーランガリーラは嬰ヘ調「ファ#(Fis)」

Fis(Ⅰ)・H(Ⅳ)・Fis(Ⅰ)なので「アーメン終止」になるのです。
(賛美歌の最後に ♪アーメン と歌う、あのハーモニーです)
これこそ まさに、祈り。
希望と愛へと導く、大きな宇宙!



このコンサートの構想は1年前くらいから考えたそうですが
優人さんの思いが まるで運命の糸をたぐりよせるように
音楽と人々と、その愛を集め
「生きる喜び」の表現をする日に向けて
大きくふくらんでいくのです。。


この日は会場にグランドピアノが用意されていました。
優人さんは、それを弾いて曲の説明などをしてくれましたが
演奏も2曲ありました♬
どちらもオルガンで演奏する曲ですが、即興でピアノにアレンジしての演奏です。

お話の間に
スウェーリンク「涙のパヴァーヌ」

そして最後に、前述の
バッハ「我ら苦難の極みにある時も」
この曲を優人さんは3.11の年にずっと弾いていたそうです。。




さて、おしまいに質疑応答の時間がありましたが、
誰も手を挙げる人はいません。
それはもう、これだけ濃い内容を聞いてしまったら大満足ですもの。
なんだかパンドラの箱を開けちゃったみたいw
ほんと、11/1が楽しみ!!




'15芸劇ちらし.jpg














































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