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MATTHÄUS-PASSION    [コンサートの記憶]

生きることの苦しさ

哀しみ

そして愛しい思い

・・さまざまな感情が

波のように押し寄せてくる!


のびやかで 凜とした歌声に

心をゆさぶられ

涙があふれる。。




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今月、2回目の「マタイ受難曲」。
指揮とアルトは、どちらも青木洋也さん。

1回目の時もすばらしい歌唱だったけれど
今回はそれを上回り
言葉にならないほどの感動におそわれた。


受難の物語は、イエスの弟子によって遠い昔に書かれた。
それが
あたかも目の前で繰り広げられているかのように語られる。

岩と砂の手触り
乾いた風
湖にきらめく 陽の光

アルトの歌声は 
そんな空気まで連れてくる!



それは、2回目の演奏の前に青木さんがイスラエルを訪れたから。



楽譜を深く読み込み、熟慮し
その解釈を音にするのが演奏家。

けれど、その上に 自らの感性を重ね
今を生きる人の発露が豊かに表現された時
聴く者の心に大きな感動を呼び起こす。。






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アルトのアリアの「神よ憐れみたまえ」は
ヴァイオリンの独奏とともに演奏される。
原田陽さんのヴァイオリンは独唱に寄り添い
切々と歌い上げる。
お互いが陰になり日なたになり
優しい空間が創られる。。



コンマスの原田さんを筆頭に
オリジナル楽器のオーケストラは、全員が本当にスペシャル!!

与那城さんのイエスはイケメンすぎて
「死なないで!」
と思わず祈ってしまったほどw

そして、
児童合唱はまさに天使だったよ。







































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Spring         [音のしずく]



夕空にかかる細い月

煌めく三つの星は

高い尖塔をさし示す






異教徒の祈りが

天蓋にこだまする



悠久の昔から続いてきた

日々の営み













やがて旅人は

遠い空の彼方から

美しい翼を操って

この地に降り立つ





そして

どんなに たくさんの人々がいようと

私を見つけて

あたたかな手で

私をつつんでくれる




私の心を解き放った

あの 大きな優しい手で。。。

















































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Matthäus-Passion       [コンサートの記憶]

J.S.バッハ『マタイ受難曲』(BWV244bに基づく単一合唱版・世界初演)
               ~ウェスレアン・ホーリネス淀橋教会


「マタイ受難曲」は二つの合唱・合奏で演奏されるが
バッハ自身が単一合唱・合奏で演奏したのではないか、という研究がなされ
ついに「単一合唱によるマタイ受難曲」の世界初演となった。



'19March単一マタイ1.jpg




二つの合唱・合奏の迫力そのままの
密度の濃い演奏が繰り広げられる。

福音史家のドラマティックな語り
静謐なコラール

外光を採り入れた礼拝堂
陽射しの傾きと受難の物語がシンクロし
薄暮の中でイエスが逝く場面で落涙。。





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そして、なによりも
優しくのびやかな
AltoのAriaに
心がふるえる。。

































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ふたつの「四季」       [コンサートの記憶]

すみだ平和祈念音楽祭2019
マックス・リヒター・プロジェクト

《四季》
                ~すみだトリフォニー 大ホール

(出演)
(ヴァイオリン)ダニエル・ホープ
(チェンバロ)北谷直樹
(管弦楽)新日本フィルハーモニー交響楽団


(プログラム)
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」

マックス・リヒター リコンポーズド~ヴィヴァルディ/「四季」

(アンコール)
J.S.バッハ/G線上のアリア 








陽の光にきらめく
明るい音楽が躍動する!

海からの風
鳥が歌い
尖塔は青空に高くそびえ
石畳の街を人々が行き交う





ずっと待っていた、この時!
いつか きっと
この耳で 
奏でる音を聴き
鼓動を感じ
音楽に身をゆだねたいと夢みていた。。






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ダニエル・ホープのつくる音楽は
理知的で甘くない
でも
とても自由で即興的。

世界中で活躍するヴァイオリニストの様子は
インターネットで瞬時に見ることが出来る。
でも、それはオンラインの世界。

ヴィヴァルディの「四季」と
マックス・リヒターがそれをリコンポーズした「四季」。
ふたつの「四季」を
オフラインで、生で聴きたい!
と、ずっと願っていた。



ダニエル・ホープの楽器グァルネリ・デル・ジュスは1742年製という。
ヴィヴァルディの「四季」が世に出たのが1725年だから
まるで古いヴェネチアの空気が現代に蘇ったように
ヴァイオリンは同じ時代の音楽を奏でる!

しかし、ここで奏でられているのはモダン仕様の楽器。
ピッチもA=442Hz。

古い時代の音楽は
最近、オリジナル仕様の楽器と奏法で演奏されることが多く
ピッチも現代のオーケストラの標準より半音近く低い。
古楽はビブラートを少なく、アーティキュレーションを明確に演奏する。
そんな演奏を聴き慣れてしまうと
モダン楽器での演奏は妙に肥大して聞こえてしまう。

ところが、この日の演奏は本当に爽やかで
モダン楽器であることを忘れてしまいそう!

エキサイティングなソロとインプロビゼーション!
そして、アンサンブルをぐいぐいと牽引し
立体感のある音楽をつくりあげるダニエル・ホープ。

アンサンブルの要である通奏低音のチェンバロは北谷直樹。
彼はダニエル・ホープと多くのツアーや録音を共にしてきたが
何故それほど大きな信頼を寄せられているか、
今回初めて聴いて、深く納得!
音楽を俯瞰し、冷徹に奏する一方で
とても情感豊かな表情も醸し出す。
何より即興のお洒落なこと!
これでもかっというような、センスとリズム感♡
それがソロをさらに引き立たせ
アンサンブルを鼓舞する。。

そのアンサンブルは新日本フィル。
少人数で、チェロ以外は立奏だ。
ダニエル・ホープの音楽的な要求に俊敏に反応し
エネルギーに満ちあふれた、心躍る演奏を聴かせてくれた。

ソリストとオケのメンバーが目を見交わし
時折、微笑み合いながら演奏しているのを見て
「赤毛の司祭」と呼ばれたヴィヴァルディに思いを馳せる。
ヴェネツィアのピエタ慈善院付属音楽院で教えていたヴィヴァルディ。
彼は生徒達と、こんなふうにアンサンブルをしていたかもしれない。。




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後半はエレクトロニクスが導入されるので
生演奏をしている楽器にマイクを付ける。

天才マックス・リヒター リコンポーズドによる「四季」。
元の作品のエッセンスをすくい取り
変拍子やリハモナイズを駆使して創り上げた作品。

モチーフが増幅され
ミニマルミュージックのように反復される。

たとえば、優しく温かい思い出
やすらぎに満ちた ひととき
そんな
心の奥の忘れ去られた遠い記憶を呼び覚まし
幸せな振り子がゆれる。。

これはもう、聴くというより体感!!
すごい音響に心が震える。
それもそのはず、
音響はマックス・リヒター専属のサウンド・エンジニアの
クリス・エッカーズだったのだから。

それにしても、
以前から聴きたかった二つの四季が聴けて感無量。
思い続けていれば
夢はかなうのですね。。




'19Marchダニエル・ホープ1.jpg
                  (この写真はweb上からお借りしました)



そしてアンコールは
J.S.バッハ「管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068」の第2曲「アリア(エール)」。
(のちに編曲されて「G線上のアリア」と呼ばれるようになったが、
 この日は原曲のニ長調で演奏された。)

ダニエル・ホープがアンコールの前に話してくれたのは、
・・数日前に亡くなったアンドレ・プレヴィンが
  東日本大震災の追悼のために、N響を指揮してこの曲を演奏した事・・
「今日はアンドレ・プレヴィンの追悼のために演奏します。」


PAが外され
ふたたび生の音色が響く。
ヴァイオリンとチェンバロだけの二重奏。

心のこもった演奏に 涙 涙。。



実は数日前、これから演奏する曲を選んでいて
「あ、G線上のアリアも良いなあ」
と候補曲にリストアップして弾いていたのだ!
なんという偶然でしょう。


何かに導かれたとしか思えないような演奏会。
最後の最後まで。。

































































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