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rhetorica            [語られる音たち]

音楽修辞学入門
        ~Space415

斉藤基史さん(音楽学)の講座に伺いました。

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(自分用メモ)

・レトリック(修辞学)は古代ギリシャ・ローマ時代に身に付ける教養の一つだった。

・それは5つの要素(発想・配列・措辞・記憶・口演)から成る。

・ヨーロッパでは中世から18世紀にかけて学ばれていたが、19世紀に衰退。
 第2次世界大戦後に欧米で見直す動き。日本は1970年代以降に研究されるようになった。

・20世紀になってから17、18世紀の主にドイツ・バロック音楽における
 音楽と修辞学の結びつきが再発見される。

・アフェクト=合理化(パターン化)された心の状態
 正しく抑揚をつけてテキストを表現する→言葉と音楽にバランスの取れた均衡が生み出される

・音楽フィグーラ 自然や感情を表現する方法としての修辞学
 ex:Miserere「憐れんで下さい」でよく使われるフィグーラ
        言葉を縦に揃える、変化音(#♭)、同一音の反復、下行4度音型



・・というようなお話でしたが
丁寧に作成された資料に加え、音源もいくつか流して下さるという充実した講座でした。
入門編ということで、初心者にも解りやすいお話ぶり。
心配していたアウェイ感もなくてw良かったです~。




'16Aug古楽カフェ3.jpg





ところで、これは3日間にわたって催された「古楽かふぇ」の中の講座でした。
いくつか設定された講座やコンサートの時間以外は
古楽の好きな人たちが集って語り合いましょうというものです。


遠藤さんという、ルネサンスの料理を研究している方のお菓子と飲み物をいただきました。

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フィナンシェとスバイス入りの飲み物、絶品でした!
飲み物は、アップルジュースに
ジンジャー、シナモンスティック、ミント等を入れ、煮立ててから冷やすそうです。


古楽のCDが大特価で販売されていたので、たくさん購入しました。
家に帰ってからも、お楽しみは続行中です~♬


















































Danser ダンセ        [語られる音たち]

チェンバロの魅力Ⅳ Danser ダンセ ~ 舞う
                   ~神奈川県民ホール(小)


チェンバロ・お話:大塚 直哉
バロック・ダンス:市瀬 陽子



'16Mar大塚チェンバロ.jpg



チェンバロの、というより大塚先生の魅力全開のレクチャー・コンサートでした♫

ダンサーが踊れるように楽器を演奏するなら、
テンポ感もリズム感も必須なのはモチロンですが
そこを軽くクリアして、さらに微妙な間合いが演奏できるってホントに凄い!
即興演奏もカッコ良く決めていらして、すばらしかったです~。

市瀬さんの軽やかなダンス、そして華やかな衣装にはクギ付けです。
まさに目に見える音楽ですね。

スライドを観ながら、フランス宮廷でのバロックダンスのお話もありました。
当時のステップ等、踊り方の記録が楽譜のように残っているので、
こうして再現できるのですね。




さて、コンサートの後は公開レッスンです。

チェンバロを演奏する人たち、バロックダンスをする人たち
それぞれがステージに上がりましたが
私たちも客席でステップの体験をしました。

身体の重心を移動させる?
拍を感じる??

市瀬さんが示すお手本を真似てみようとしても
なかなか上手く出来ません!!
ダンサーって凄いのね~。

大塚先生が
「ダンスは3Dなので得ですよね。
演奏も、もう少し主張出来るところがありますよ」
なるほど、テンポにハメすぎない方が良い部分もあるわけですね。

演奏と振り付けが常に合っているかというと、そうでない所もあり
そういうズレが緊張感を生む。
それがまた楽しい、のだそうです。

楽士と踊り手が呼吸を合わせるのも大事で
踊り手が上手に誘うと楽士が演奏を始めやすいし
それによって音楽の大きな流れが生まれるのですね。

ダンスと演奏を同時にクリニックするのは、大塚先生の夢だったそうです。
この新しい試みは、お二人の先生によって大成功となりました。

楽譜とにらめっこしているだけでは解らない、ライブな音楽!
時々は鍵盤から離れて、ステップを踏んでみようかな~♪♫♪







































Dona nobis pacem         [語られる音たち]

オラトリオのアリア特集 バッハの作品を中心に
               ~池袋コミュニティカレッジ

加耒 徹(かく とおる・バリトン)



'16Feb Kaku.jpg


初めて加耒さんの歌声を聴いた時、あまりの素晴らしさにビックリ仰天しました!
それは、私が歌っている合唱団・エルヴィオソーヌスのソリストとして来てくれた時。
深くて、彩り豊かなバリトンの響きに釘付けになりました♬
加えて超イケメン!
しかも、性格が非常によろしくて、育ちの良さを感じてしまう。
いわゆるマダムキラー(shigo)ですw

しかーし、あの公演「クリスマス・オラトリオ」の時は
ソリストはモチロン客席に向かって歌いますから、
私たちは後ろで聴いていたわけです。
合唱団の一人が「後ろ姿の御髪さえも美しく決まっている♡」
とのたもうておりましたw

いつか正面から聴きたいなあと思っておりましたが、
漸く念願がかないました!

しかも、カルチャーセンターのお教室で!
つまり至近距離なんですよっ。
受講生は20名ほどだったでしょうか。
贅沢にもほどがあるっ!w

あの声でアリアを熱唱されてごらんなさい。
もう、正気を保つのがタイヘン!
カルミナで魂さらわれ、ラターで昇天。。
(ラターの「Dona nobis pacem」は天上からの歌声でしたよ)

何の飾り付けもない部屋なのに
それぞれの情景が立ち現れるさまは、実に見事でした。

プログラムと歌詞の対訳を頂きましたが
これは「僕にしては珍しく」作ったものだそうで、貴重なのですね!

解説も丁寧にして下さったので、時間が押してしまい
後半の数曲が聴けなかったのはザンネンでしたが
「ロ短調ミサ曲」が聴けたのは嬉しかった!
これは来年2月の私たちの演目です。
また加耒さんに来ていただけるので、本当に楽しみです~♬

解説の中で、ピッチの事に触れて下さったので記しておきます。

以前、加耒さんは自分の絶対音感を使って歌っていました。
つまり、ピアノが調律されている高さの音感。
でも、バロックの曲を歌うようになると
オリジナル楽器はピアノより半音低くなっていますから
絶対音感が邪魔になってしまいます。

バロックの時は絶対音感を捨てて歌う。
最初はとても難しかったそうです。

ヨーロッパではパイプオルガンがとんでもない調律になっている事があります。
半音低いどころか、もっとずっと低かったり
逆に3度も高かったり。
それに合わせて歌うのは本当にタイヘンだとか!
絶対音感より、音と音の幅が解る相対音感の方が大事なんですね。


そうやって切磋琢磨して、
表現の幅を広げているのは本当に素晴らしい!

これからの活躍に期待大でございます♬♪♬






































新しい世界へ、ようこそ!             [語られる音たち]

小曽根 真 ワークショップ「自分で見つける音楽 Vol.3」
                  ~ 東京文化会館小ホール




'15Oct小曽根WS.jpg




毎週、欠かさず聴いていた 小曽根さんのラジオ放送が終わってしまってから
このワークショップは小曽根さんのお話が長ーく聞ける唯一の機会になりました。
(ほんとうに、あの番組の復活をずっと祈っているのですけれど!)

小曽根さんが音楽と出会った、小さい頃のエピソード・・始めはオルガンを弾いていたこと、
そしてオスカー・ピーターソンに出会ってピアノを始めたこと。。
それは、もう良く知っている事だけど
何度聞いても本当に楽しい!

最初に演奏されたのは Cubano Chanto (Ray Bryant)

これは小曽根さんが初めてオスカー・ピーターソンの生演奏を聴いた時の曲。
これを聴いた時、雷に撃たれたような衝撃を受けたのだそうです。
これが「本物のジャズ!」

ところでCubanoは「キューバの」、 Chanto は「合唱」という意味なのですって!
あら~、ステキですね♬



音楽の3要素であるメロディー・リズム・ハーモニーのこと。
特にジャズはリズム命!
易しい言葉で楽しく語ってくれると、もうすぐにでもジャズが弾けそうな気分w

アレンジが変わると、まるで違う表情になってしまう例として演奏されたのは
Autumn Leaves(Joseph Kosma)

色とりどりの枯葉が舞っているような、秋の旅♬


そうそう、椅子の座り方のお話は初めて聞きました。
小曽根さんは小さい頃のピアノの先生に、
弾く時の姿勢を結構キビシク言われたようです。

私が初めて小曽根さんの演奏を聴いた時の第一印象は
ジャズ・ピアニストなのに(!)姿勢が良い、というものでした。
ジャズを弾く人って、凄くクセがあるからね。
加えて、とても音が綺麗だった。(もう、ひと耳惚れです♬)

その、姿勢というのは
背骨の上に頭が乗るように座る、というもの。
鍵盤の幅は広いので、その基本を守りつつ体重移動する。
だから椅子の端に足の付け根がある位、浅く腰掛けます。
深く座ると身動きが取れなくなりますよね。

このお話は、会場からの質問に答えてのものでした。
その質問は身体のために良いスポーツは?というものでしたが
小曽根さんは、自分はスポーツが苦手なので、と前置きして
演奏の時の身体の使い方を話してくれたのです。
(とても苦手そうには見えませんが・汗)

そして最後の演奏は
Bienbenidos Al Mundo (Makoto Ozone)
「新しい世界へ、ようこそ」ですね。

音楽をすること、演奏することは自分なりに試行錯誤して見つけていくもの。
それは音楽に限らず、仕事や生活の中でも同じ。

さあ、新しい扉を開いてごらん!



アンコールは
My Foolish Heart (Victor Young)

・・おろかなる わが心
何度も傷つけられたけれど
今度は本物の愛・・

極上の響き
この世のものと思えない美しい音楽で
静かに しずかに 幕を閉じました。





























チェンバロ解体新書         [語られる音たち]

ほんとうに

思いがけなかったことは

今になって

ドキドキ・・



チェンバロ解体新書  宮廷の楽器を弾いてみよう
              ~くすのきホール


翌週から始まる調布音楽祭のプレトークイベントです。
音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーの鈴木優人さんがチェンバロの解説をしてくれました♬

ステージの上にチェンバロがありますが、本体が白木の台の上に乗せてあります。
その隣にチェンバロの足の部品がバラバラに置いてあります。

優人さん「皆さんで、これを組み立てましょう。」

というわけで、皆でネジをぐるぐる回して足台が出来上がり~。

'15JUnチェンバロ解体新書1.jpg




この上にチェンバロの本体を乗せます。
これはシロウトだとキケンなので、本職の皆さんが。


'15JUnチェンバロ解体新書2.jpg





こうして弾ける状態になった楽器。
今度は音の出る仕組みのお話です。

'15JUnチェンバロ解体新書3.jpg



中の部品を外して、丁寧にわかりやすく説明して下さる優人さん。
チェンバロは撥弦楽器(弦をはじいて音を出す)なので
昔は鳥の羽で出来ていたというツメの部分を初めて見ると感動しますね。
皆さん「ほお~」「へええ」と感嘆の声。

さらには調律も実際にやりながら解説。
私は長年、平均律に慣れ親しんできたので
図説で音律の説明をされてもなかなかピンと来ないのですが
こうして 実際に音を出して
「ほら、音のうねりがなくなってきましたね~」
と解説して下さると、本当に納得です!


鈴木家のチェンバロは装飾が実に美しいですね。
外側と蓋の部分は黒塗りに金箔で東洋風の絵柄。
そして、内部も美しいこと。
ほら、海老がいるでしょう。
なので、このチェンバロの愛称は「エビちゃん」です♬

'15JUnチェンバロ解体新書5.jpg






チェンバロはピアノのように、どこのホールにもあるわけではないので
演奏会のたびにお家から運び出すのです。
昨日もNHKの収録でスタジオに運ばれていったということで
大活躍のエビちゃんです!



そして最後に
「今日は弾くつもりはなかったんだけど」
と、大サービスで演奏して下さいました!!

しかもっ!

イタリアン・コンチェルト!!!

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こ~んな至近距離で聴けるなんて、もう 倒れそうです~~♡

最初の部分だけでしたが、ほんと 嬉しすぎでした(感涙)。。







































祈りのうた           [語られる音たち]

オラショ~祈りのうた~

皆川達夫さんのお話を聞きました。

「オラショはラテン語のoratioの由来し、祈りを意味します。
長崎県の生月島で、禁教の時代から脈々と口承されてきたオラショは1時間ほど続き、
意味不明な言葉も少なくありません。

特に最後の「らおだて」「なじょう」「ぐるりよざ」という3つのオラショは
ご詠歌とも祝詞ともつかない不思議な節回しで唱えられます。
意味不明な言葉はラテン後が訛ったものです。

オラショを習うのは「春の悲しみの期間」(キリスト教の復活祭に先立つ四旬節)に限られ
神に書き取ってはならないとされていました。」
                      (講座の案内より 抜粋)


皆川達夫さんは1927年生まれだそうですが
びっくりするほどお元気で、マイクなしで淀みなくお話になり
隠れキリシタンの時代背景を熱く熱く、語って下さいました。

何度も生月島に通って研究を重ね、
イタリアからスペインまでも足を運び
ついにオラショの元になっているグレゴリオ聖歌が
スペインから来た宣教師によって日本に伝えられたものだということを
突き止めたのです。

'15Marchオラショ.jpg



貴重な録音も沢山聴かせて頂き、
しかもネウマ譜で歌えて大満足~!

でも、去年ヴァチカンで歌う前に聞きたかったお話でした。
もう少し背景を知っていれば、
より気持ちを込めて歌えたと思うのね。。


これから歌う方は 是非、皆川達夫さんのご著書をお読み下さい~。






























Scarbo          [語られる音たち]


菊地裕介 ピアノの世界

ラヴェル「夜のガスパール」

1908年、ラヴェルが33才の時に作曲された組曲で
同じ年に連弾曲のマ・メール・ロワも作曲されています。
マ・メール・ロワがやさしい連弾曲だったのに対して
「夜のガスパール」の3曲目「スカルボ」は、
当時 大変な難曲として知られた「イスラメイ」を超えるものを作るという
ラヴェルの意気込みで作曲されました。。

そんなふうに始まったレクチャー&コンサートです。

ⅠOndine(オンディーヌ)
ⅡLe Giget(絞首台)
ⅢScarbo (スカルボ)

それぞれの曲の冒頭に、ラヴェルが読んで着想を得たという詩が載せられています。
菊地さんは、最初の詩を原文のフランス語で読んでくれました。
ほええ~、うっとりです~。

物語の内容が解ると、当然ながら演奏の理解が深まります。
そして、演奏が「どう聴こえているか」が重要なので、自分の音を良く聴くことが大事、と
演奏技術の種明かしをしてくれます。
簡単そうに弾いていらっさいますが、凡人にはそうカンタンには出来ないんですよねー・汗


ところでところで
「スカルボ」はテンポ設定について、新たな見解の発表がありました!
楽譜に書かれている指示通りに弾くと、
これまで、どんなピアニストもしたことのない演奏になるのです。
まさに前人未踏です!

この演奏は5月のリサイタルでも聴けますし、新しく発売になるCDにも録音したそうです。
5/17は、なんとラヴェル全曲演奏会なんですね!
これは楽しみです~♪


'15Marchラヴェル.jpg






















冬の日に             [語られる音たち]

みなさんはクリスマスに どんな思いをお持ちですか?

私は街にクリスマス・ソングが流れ出すと
とても切ない気持ちになります。。

(その人は、静かにクリスマスのお話を始めました。。)




・・私の通った幼稚園では、クリスマスにサンタがプレゼントを持ってきてくれました。
サンタは、ホールにあった大きな煙突から登場したこともあって
私はサンタの存在を信じ切っていました。

小学二年生の頃だったか、友達に
「サンタはいないよ」
と言われ、口論になりました。
家に帰って母親に
「サンタはいるよね?!」
と聞きました。
母親は、もう小学二年なんだから、という思いもあったのでしょう、
「いないよ」
と答えたのです。

その時の衝撃は忘れられません!
確かにあった壁が ざーっと崩れ落ちていくような
世界が空気の中にくずれて行くような光景が見えた気がしました。




・・私は1枚のレコードを大切にしていました。
それは様々なクリスマスソングが入っている、
今で言うコンピレーション・アルバムです。
その中の1曲のクリスマス・キャロルが特に好きで愛聴していました。

ある時、従兄弟がそのレコードを貸してほしいと言いました。
その子は乱暴者だったので、私はちょっとイヤな予感がしたのですが
母親に
「貸してあげなさいよ」
と言われ、渋々貸したのです。

案の定、レコードは割れてしまいました。。

またあの曲が聴きたいと思い、同じレコードを捜したのですが
見つかりませんでした。

私は職業柄たくさんのCDを聴きます。
サンプルとして貰うものもあり、クリスマスのCDだけでもかなりの数を持っています。
でも、その中に
あのクリスマス・キャロルはないのです。

毎年、クリスマスが近づくと発売されるCDたち。
今年は入っているかもしれない!
と期待して聴くのですが、ありません。

私が5歳くらいの時のレコードですから、
たぶん有名な曲を集めたものだったはずです。
それなのに、あの曲は再び聴くことが出来ないのです。

幼い時の記憶なので、曲を正確に覚えていたわけではないから
もしかしたら、すでに同じ曲を聴いたのかもしれませんね。
でも、私のなかでは
あのレコードに入っていたクリスマス・キャロルは
聴けていないのです。。



こんなことから、私はクリスマスが近づくと
とても切ない気持ちになるのです。。






そんなお話の後、ご自分で書かれたエッセイをコピーして配って下さいました。
(著書か雑誌で発表されたものだと思いますが、注釈がなく不明です)




「冬の日に」

 夢は、破れるから、さらに求められるのだろう。
世界中のお父さん、お母さんたちが、子供にサンタクロースの話をしきりに伝えるのは、
自分が子供のころサンタクロースがいないと知って、夢が破れたからではないだろうか。
子供にとってサンタクロースの夢は楽しいだけだが
大人にとってのサンタクロースの夢は少し悲しいのかもしれない。

 でも、お父さん、お母さん、サンタクロースはいるのです。
なぜってサンタクロースの体験を語った物語があるのだから。

 そのサンタクロースは、プレゼントを置こうとしたところを、
ベッドで起き続けていた少年に見つかった体験を書いている。
少年は
「ねえ、パパでしょう?」
と言って、まるで信じてくれない。
「本物のサンタクロースだよ。世界中の子供たちにプレゼントを配っているんだ」
と説明しても、
「学校のみんなも、プレゼントを持ってくるのは、本当はパパなんだって言ってるよ」
と、てんから信じようとしない。
少年が自分で作ったという大きな靴下に戦車のプラモデルを入れ、
サンタクロースは本物であることを証明してみせるために部屋の壁を通り抜けて外に出た。
「本当はパパなんでしょう?パパだと言ってよ」
という少年の言葉を背に。

 外は雪が降っていた。
雪の中でそりを動かそうとして、ふと妙な気持ちになり
サンタクロースは門のほうに回ってみて、自分の額をたたいた。
雪に半分埋もれていたが、表札には明らかに
「孤児院」
と書いてあった。



 ヨーロッパのクリスマスは、12月25日に終わってしまうのではない。
マリアの光のミサである2月2日ごろまで、クリスマス・ツリーは光を灯し続けている。
年が明けたという感覚はあまりないから、
新年になっても、ふと、クリスマスがまだ来ていないような気がする人もいるだろう。
この少年も、サンタクロースを信じていないのに
靴下をまだしまっていないかもしれない。

キリストの降誕を歌うキャロルのひとつに、
クリスティーナ・G・ロセティの詩にハロルド・エドウィン・ダークが作曲した
「冬の日に」
と題するものがある。
重いオルガンの響きとともに聖歌隊が
「雪の上に雪が降り続ける」
と厳しい冬を歌い始め、さいごは無伴奏で聖歌隊の少年の声だけになる。
「彼に何を与えることができるのだろうか、貧しい私が」
と静かに響き合う透きとおったコーラスを聴いていると、
なぜか、少年の作った靴下が思いうかぶ。



In the bleak midwinter (Harold Darke) - Guildford Cathedral Choir (Barry Rose)



静かな語り口が心に残る、クリスマスのお話でした。。

この日は、他にもいくつかのお話がありましたが、
特に印象に残った、このお話を書き留めておきたかったのです。








さて、ロセティ(ロセッティ)は詩人であり、画家でもありました。
それは、あるコンサートで初めて知った事です。

→ 

これは、今年の春まだ浅いころでした。
それがこんなふうに繋がってくるとは、不思議です。


ちなみに、これと同じ詩にホルストが曲をつけたものもありますね。
でも、このエッセイはこの曲でなければならない思いが込められています。










お話をして下さった梅津 時比古さんの著書の中に「フェルメールの楽器」があります。
絵画の中で見る楽器が、どんな音色を奏でるのだろうと思っていた私を
古い音楽の世界に導いてくれた本でした。

生きていると、こうして何かが ふっと繋がり合うことがあります。
そんな不思議な 冬の日。






































Sence of Freedom        [語られる音たち]

小曽根真 ワークショップ
「自分で見つける音楽」Vol.2
            ~よみうり大手町ホール


'14DecOz.jpg

この日は自由席だったので、早くから並んでいる皆さんでディズニーランド状態です。

ホールに入るとピアノがセッティングしてあるので、いつものコンサートのようですが
「間もなく開講いたします・・」
のアナウンスで講義だったー、と気付いたりしてw
でも、何人かは小曽根さんが(いつものように)客席後方の扉から登場するのではないかと
首を後ろにねじ曲げています~。
でも、ちゃんとステージ上手から登場です!
そして1曲 演奏してくれました。

♪思いあふれて:アントニオ・カルロス・ジョビン

イントロが、なんとポリフォニーです。
小曽根さんの左手の旋律が良く歌うこと!
まるで教会のオルガニストの即興演奏のようです~。
それがボサノバになっていく、すてきな流れ。
スタインウェイの軽やかな音が
ひとつぶずつ踊りながら宙を舞っていく。。

お話は
「音楽、特にジャズではリズムが最重要!」
というところから始まりました。

楽器の弾き方が身体に入っていれば、リズムをコントロールすることが出来る。

例えば、前ノリでプッシュして弾くオン・トップと
後ろにのるレイド・バックではカラーが違う。
こんなふうにね、とピアノで弾いてくれるところが凄いよねええ。

続いてハーモニー。
ピアノで伴奏をする時、ソリストがどんな音色を欲しているかキャッチする。
相手のためにスペースを空けてあげることは大事。

ここでスペシャルゲストのパキート・デリベラさんを、小曽根さんが
「そこにいるだけでHappyになる人」
と紹介。

クラリネットとサックスを持って登場したパキートさん、
楽器を望遠鏡のようにして客席を眺めていますw
パキートさんは
「これから正しいモーツァルトを演奏するよ。
これを聴けばモーツァルトがニューオリンズ生まれだってわかるよ」

♪クラリネット協奏曲より第2楽章:モーツァルト

ホントにジャズの香りがいっぱいでした~♪
「これは原作から移調して演奏したよね」
と小曽根さんが言うと
「そうなんだよ、A管は質屋に入れちゃったのさ」
とパキートさんww

パキートさんのお話は、カーメン・マクレイが自分のバンドの事について言ったこと。
「彼らが聴くことを覚えれば、もっと素晴らしいバンドになる」

サイレンス=無音の大切さ。
自分の音を聴くこと、
そしてコミュニケーションをとるためには相手を聴かないと!

アドリブについての質問に答える形で、演奏されたのはクリスマスソング。
自分が欲求した、自分に聴こえた音を弾けば良い。

♪The Christmas Song

参考) Nat King Cole




また、どんなふうに練習しているか、という質問に対して
小曽根さんは常にドラムスを想像して弾いている、との答え。
パキートさんも
「ハープ奏者はパーカッションを習った方が良い!」
ええ?!
小曽根さん「どうもハープの人と何かあったらしい」ww

ドラムスはスティックの扱いが技術的に難しいので、コンガがオススメだそうです。

リズムのセンス。
そして、リズムがあるからこそ自由に演奏するセンスがある。
Sence of Freedom!       


この日 語られた中で、とても印象に残ったのは、
「自分で発見したものは忘れない」
人から教わった事やコピーしたものでは身につかない。


そして、自信を持って弾くためには
「準備は練習しかない!」


♪To Brenda With Love :パキート・デリベラ

ゴキゲンなこの曲のタイトル、ブレンダさんはパキートさんの奥様です。



(アンコール)
♪Black Orpheus:Louiz Bonfa

ライブではないのに、会場の盛大な拍手に応えてくれた小曽根さんとパキートさん。
しっとりとした旋律が柔らかい空気をつくり
聴くことの たいせつさを あらためて教えてくれる。

そして、コーラスを一緒に歌おう!と誘ってくれて
会場の皆で口ずさみました。
小曽根さんのピアノで歌えるなんて!
まさに至福のひととき。。

















































深く聴き、恐れずに歌いきる         [語られる音たち]



ジャン=クロード・ペヌティエ

若い音楽家のためのマスタークラス
              ~トッパンホール



フォルジュルネでピアノトリオを聴いたばかりのペヌティエ先生のレッスンです。
3人の若い音楽家が、それぞれフォーレ(前奏曲集より3・4・9番)、
ショパン(前奏曲集より1・14・15番)シューベルト(ピアノソナタ第21番の抜粋)のレッスンを受けました。
ペヌティエ先生が翌日のリサイタルで演奏するのと同じ曲です。



ステージ上には2台のグランドピアノが置かれていますが、
受講生とともに登場したペヌティエ先生は、客席に降りて最前列中央に腰掛けました。
そこには聴講者が座っていたのですが、席を譲ってもらっていました・汗

通訳は私が大ファンの藤本優子さん。
てきぱきと、でも落ち着いた語り口で先生の言葉を全て訳して下さいます。
一昨年のパスカル・ロジェのマスタークラスの通訳もこの方でした。
マスタークラスは通訳で随分印象が変わってしまうので
今回は本当に深くレッスンが聞けて、とても良かったです。



以下、自分のためのメモ。


フォーレ:前奏曲集Op.103
(3番)
晩年の、死を見つめていたフォーレ。
フォーレの作品の特徴は、常に何かに恋い焦がれるような感じがあること。
(4番)
美しく、長いフレーズを描く。作曲家が私達の前で曲をかいているように。
ハーモニーの質感が支えになっている。
息づかいを意識する。
クレッシェントは息づかいが大きくなっていくだけ。
たとえば外に出た時に木のざわめきが大きく聞こえるように。
(9番)
音は少ないが緊張感を保つ。
三声は弦楽三重奏のように長いフレーズを感じる。見事な対位法。
目の前に広がる冬の風景。



ショパン:24の前奏曲Op.28
(1番)
各声部をクリアに。
ショパンの時代の低音の使い方はチェロのような良い響き。モダンのピアノでは鳴りすぎる。

(14番)
ショパンは速度記号を後に書き換えている。
ペザンテ。
(明日、あなたは私のリサイタルに来ますか?
この曲を全然違う解釈で弾くので驚くと思いますよ!)

演奏する人は内気な人が多い(すぐさま正しいことをやりたがる)が、
芝居をやる人のように極端な事を試してみると良い。
そうすると心身が柔軟になって解き放たれる。
イマジネーションが豊かになる。

(15番)
音色の変化は突出しないこと。例えば始めの1ベージは同じ色になる。
28小節目~ 緊張感を保つ。

自分の身体に不自然なことをやってはいけない。
日本の座禅の座った姿はとても自然。




シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 D960

シューベルトの時間の操り方は特別。現代人と全く違う。
今という時間は次はこうする、という流れがあるが
シューベルトは今の充足感。「今」しかない。
時間をたっぷり味わってシューベルトのエレメントを表現する。

人間の魂の神髄に触れる音楽。

繊細だがきちんと存在すること。ムーディーではいけない。
ペダルは耳でふむ!

気持ちよく聴かせる。自由でしなやか。ハピネス。幸せをあびる。
その事と、全ての音をきれいに発音することを兼ね備える。

16分音符4つ、8分音符2つというようなシンプルな音型を
美しいと感じる伝統はドイツ的。

1つのフレーズを同じ力で弾ききることを恐れない。
途中でゆるめずに歌いきること。







レッスンは、それぞれ時間を延長して行われました。
ペヌティエ先生の深い情熱と真摯な語り口に時が過ぎるのを忘れていました。

先生が「これ以上続けるとナイトクラブになってしまうので、今日はここまで!」
そして3人の受講生へ
「経験を積んで、音楽を語らせましょう」
と おっしゃって お開きになりました。














































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