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"KEYS"      [コンサートの記憶]

角野隼斗 全国ツアー 2024 “KEYS”
         ~サントリーホール


美しい翼を広げ
力強く羽ばたく

時は今!

憧れていた
高く 青い空へ・・


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(プログラム)
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 BWV971
モーツァルト:ピアノソナタ 第11番 イ⻑調 K. 331「トルコ⾏進曲付き」
⾓野隼⽃:24の調によるトルコ⾏進曲変奏曲

⾓野隼⽃:⼤猫のワルツ
ガーシュウィン(⾓野隼⽃編曲):パリのアメリカ⼈
ラヴェル(⾓野隼⽃編曲):ボレロ

(アンコール)
角野隼斗:ノクターン
    :きらきら星変奏曲(変ホ短調)



clavier(クラヴィーア)は
ラテン語の「clavis (クラヴィス=鍵)」が語源。
時を経て
全ての鍵盤楽器の呼び名になった。
英語の鍵盤=keybord
KEYS=鍵はクラヴィーアが奏でる音楽?



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満員の大ホール。
ステージ中央に
スタインウェイのグランドピアノ。
拍手の中
黒い衣装の角野隼斗さんが登場。

はじまりは、バッハ。
F durの明るいアルペジオが響く。
なんて美しい音色だろう!
まるいフォルムの粒子が連なり
魅力的なフレーズを生み出し
第一楽章の
期待感いっぱいのストーリーが紡がれる。

続く第二楽章は
雄弁な左手にハッとする。
多くの演奏家の解釈は、
この楽章の左手は
右手のメロディーの伴奏だ。
ところが
角野さんの左手は
右手とともに
優美に歌い合い、語り合う。
そうか
これもポリフォニーなのだ!

そして、得意のドライブ感満載の第三楽章。
爽快なアップテンポは
この人の真骨頂!
でもね
どんなに速くても
細やかなアーティキュレーションは完璧!
それが
2階席までクリアに届くって
本当にすごい!


ここで角野さんはマイクを持って、
プログラムについてのお話を。


そして、モーツァルト。
第1楽章の全ての繰り返しを守る。
リフレインは
もちろん、可憐な装飾をほどこして。

メヌエットは
さながら貴族の館での晩餐会。
高貴な人々が品良く笑いさざめく。
目くばせ 耳うち
静かに流れる
ターフェル・ムジーク・・

そして、
パキっと弾かれた「トルコ行進曲」。
これも装飾の機微にハッとする。
爽やかに、華やかに。


バッハもモーツァルトも
モダンピアノ以前の作品なので
解釈は千差万別。
当時の楽器での表現方法にこだわる人もいれば
現代の楽器の特性を生かす人もいる。

角野さんは後者だけれど
過度にエモーショナルにならず
時代様式に即して
少しだけスパイスを加えた。
この絶妙なさじ加減!

バッハが
イタリアから伝わって来た音楽に魅了され
彼の地での合奏協奏曲を
ひとりで弾けるように作曲した作品。
これを角野さんが弾くと
まるで弦楽合奏!
ソロとトゥッティの
丁々発止の掛け合いが
聴こえてくる。

モーツァルトは
指でノンレガートで弾いたフレーズを
ペダルで繋げて
美しいレガートを聴かせる。
細やかにタッチを変えて
さまざまな表情を奏でる。
優美な旋律の抑揚は歌心にあふれ
まるでオペラのよう!
歌手とオーケストラのやり取りが
目の前に現れる。。


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さて、ピアノの向こう側に
何やら白い球体が。
角野さんの説明では
弾いた調性に反応して光の色が変化する、
というハイテクなモノ。
角野さんがホ長調を弾くと青く、
ハ短調を弾くと光が赤に変化。
まーすごいっ!と思ったら
「照明さんもありがとうございます」
と、角野さん。
あれ??w

Key には調性の意味もあるので
全ての調を使った
24の変奏曲のはじまりはじまり~♪♬

プログラムに色と調性の関係が
書いてあるけれど、暗くて見えませ~ん。
もう、角野さんの
華麗で 壮大で
本当にカッコいい
インプロいっぱいの演奏を
次々に変化する光の色とともに
まるごと楽しんだのでした♡






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プログラム後半は様々な鍵盤楽器に囲まれての演奏。
ピアニストはステージでは一人なので
囲まれていると落ち着くのだそう。

「大猫」の始まりはチェレスタ。
可愛らしい鉄琴の音色をキラキラさせると
クルッと回転してグランドピアノに。
その上にあるトイピアノも登場。
もう、
楽しくてたまらない!
という雰囲気の角野さん。

さらに
「パリのアメリカ人」は
まさに彼ならではの世界!
この映画のダンスシーンが
ダイナミックに現れる。
時を経ても色あせない
ハイセンスなミュージカル映画。
角野さんのピアノは
あの高揚感を余すところなく、
いや、さらに増幅して繰り広げる!
そして、
フレンチ・ジャズのように
オシャレではないですか♡



ーーー暗転ーーー



ステージ上で何やら準備が。
ややあって
暗闇の中
角野さんがピアノに歩み寄った?

やがて
乾いた連打が始まる。

「ボレロ」だ。

ささやくような連打は
アップライトで。
やがて音量が増す。
こんどは
グランドピアノ。
絶え間なく続く連打の上で
管楽器の呼吸をはかる。
刹那的な旋律。
さらにレンジが上がり
ヒートアップしていく音楽。

前半で聴かせてくれた
繊細な表現に加えて
後半はハンパなくスケールが広がる。

重層的なハーモニー感、
すばらしいバランス感覚で
大音量をコントロールし
立体的な音響が立ち現れる。
それは、もう見事!

さあ、螺旋状に登りつめたボレロが
ついに 頂点に達する!
巨大なエネルギーとともに
爆発!!
まさに圧巻!
ブラヴィッシモ!!




この興奮の後のアンコール。
ゆるやかな「ノクターン」は
夜というより
夜明けの音楽、と角野さん。

そうして
アップライトで奏されたのは
たゆたう波
優しくあたたかい愛。
心がゆれて
涙があふれる…

その音楽が
霧に包まれるように 閉じられる。
・・静寂


そうして
角野さんが
こちらの世界に帰ってくる。

ようやく息ふきかえし
拍手がはじまる。

ホール中の心がひとつになって
静寂を聴く。
なんて幸せなひととき。。





しかーしっ!
これじゃあ帰れませんよ!ww
と、拍手が続き
ステージに呼び戻される角野さん。

「最後の最後にもう1曲」
やったー!
ダブルアンコール♪♬しかも撮影可!
しかもSNS投稿可!(ただし動画は30秒ね)
皆、急いでスマホを取り出す(いそいそw

このツアーのラストは
「きらきら星」と決まっていて
それが毎回、違う調性で演奏される。

「今日のサントリーは B♭m、変ロ短調です。
 変な調なんですが」
プログラムの色と調性の対照表を見ると
変ロ短調は紫!
(いえぃ 角野さんが好きな色・パープルだよ♡
壮大な音楽は
短調から長調に転調し
さらにパワーアップ!
エネルギッシュなラストに大喝采!!
もちろん、スタンディング・オベーション!
(ブラボー叫んじゃったよ☆




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自ら創り上げた音楽を
人の心にダイレクトに届ける。
それには
演奏技術はもちろん
作品への深い洞察が必要でしょう。
さまざまな角度から研究し
自分の思いが伝わる演奏を模索する。
ほんとうに大変な事なのに
この日の角野さんは
そんな苦労を微塵にも感じさせず
実に楽しそうに弾いていた。

少し以前のインタビューで
「唯一無二の存在になりたい」
と言っていた角野さん。
その目標に大きく近づいた、いや
もう、達成したのではないか?

なにしろ
この日のピアノの音の充実していたこと!
自分を信じているから出せる音。
さらに
この瞬間に感じた思いを指で紡ぐ。
すると 奏者の気持ち、心のひだが
ダイレクトに伝わってくる!
同じ空間の中で それが聴けるのは
この上ない幸せ。。

ほんとうに感動的な演奏会だったよ。



それにしてもっ
進化・深化の速度が
あまりにも速すぎる!

昨年からニューヨークに拠点を移し
さまざまな音楽に触れ
さらに、
世界各地でコンサートをしている角野さん。

そんな経験が糧となり
取り込まれたものを
増幅して発信する。
このサイクルのスピードが
ものすごーく速い!


やっぱり
天才なんだな。

これからも、さらに変貌していくに違いない。
楽しみすぎるよ♡


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