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Jean Rondeau at Mitaka      [コンサートの記憶]

ジャン・ロンドー チェンバロ・リサイタル
            ~三鷹 風のホール

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988





優しい香りが
美しく花ひらく

3日前と違う舟に乗り
新しい宇宙へ漕ぎ出す。。




'23Octジャン三鷹1.jpg




低い「ソ」を響かせて
即興が始まる。

ジャン・ロンドーの
この日のインスピレーションは
柔らかな陽ざしのよう。

心を開いて語る
フランス語の物語。

まるみを帯びたフォルム。
両手に優しくつつむ
あたたかな想い出。。


かなり大きなホールなのに
チェンバロの音が隅々まで
良く響くこと!

豊かな低音の上に
煌めく音の粒子が
彩り鮮やかに舞い踊る。






'23Octジャン三鷹2.jpg


ゴルトベルクは
アリアと30の変奏曲、
そして再びアリアが奏される。

前回と同じく
全ての繰り返しを守り
変化に富んだ演奏を聴かせてくれた。

調律はジャン・ロンドー独自のものと
前日に教えていただいた。

今まで聴いてきた、この作品の
いくつかの変奏で感じていた
微妙な濁りが全くなく
まるで 
透き通った水の流れのよう。

濁りといえば
この作品を平均律のピアノで弾くと
ありえないほどの
「うなり」が生じる部分がある。
バッハの他の作品で
特に短調のものは
チェンバロで聴く方が
よほど耳になじむ。

それでも
ジャン・ロンドーは
さらに心地よい響きを追求して
オリジナルの調律法を編み出したのでしょう。



この前日のマスタークラスで
彼がフランス語で話しているのを聞き
ふと思った。
ゴルトベルク変奏曲の音楽創りに
フランス語の発音やイントネーションが
とても密接に関係している!

チェンバロのことを
フランス語で「クラブサン」というが
ジャン・ロンドーは
フランス・バロックの
繊細で優美な装飾や即興を
ゴルトベルク変奏曲に
とても自然にちりばめている。

バッハはドイツ人らしい律儀さで
装飾もきちんと譜面に書き付けた。
だから
バッハの作品は
折り目正しく演奏するのが
良しとされてきた。
まるで
ドイツ語を話すように、カッキリと。

けれど
実はバッハは即興が得意だった。
オルガニストにとって
教会の礼拝の際に必須の即興。

自身の作品には
即興と思われる部分も
しっかり書かれている。

譜面にしてしまうと窮屈だけど
実際の演奏は
もっと自由だったのではないか。
その瞬間のインスピレーションで
演奏が変化する。
音と音の
絶妙なあわい・・。

楽譜には表しきれない
そんなファンタジーが
弾く人によって
さまざまに表現される。
それこそが
古い時代の音楽を
今、ここで演奏する意味がある。

ジャン・ロンドーは
楽譜から逸脱するわけではなく
むしろ記されたものを大切に扱う。
全てを自身の中に落とし込み
暗譜で
心の赴くままに演奏する。
聴く者にとって
まさに一期一会。
100分間の至福の旅。。




'23Octジャン三鷹3.PNG

            (この写真はweb上からお借りしました)




華やかに重音が駆け巡る
第29変奏曲。
ここに到達すると
次は大好きなクオドリベッド!
でも
それを弾いてしまったら
もう終わりが すぐそこ・・

クオドリベッドを
祈るように聴き
そして
ダカーポ・アリア!
ああ、ここから
もう一周してほしかった。。




4日間、ほんとうにありがとう。




'23Octジャン三鷹4.PNG

       (この写真はweb上からお借りしました)



東京の公演の後、ジャン・ロンドーは
日本での残り2公演を無事に終えたようです。
↑これは、札幌でのショット♡



場所が変わり、空気が変わることが
心と身体に大きく影響して
演奏も変化するのでしょう。
もちろん
ホールとオーディエンスも変わるから
まさに一期一会の演奏になる。
それは彼に限ったことではなく
どの演奏家もそうかもしれない。

でもね
ジャン・ロンドーのように
音楽に心をゆだねる人の演奏は
宇宙の神秘のようなものが
聴こえてくるんだよ。。


























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