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醸化する音楽会      [コンサートの記憶]

落合陽一×日本フィル プロジェクトVOL.5 《醸化する音楽会》
                 ~サントリーホール

キャスト
落合陽一(演出、監修)
WOW(映像の奏者)
海老原光(指揮)/日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

(プログラム)
黛敏郎:オリンピック・カンパノロジー
伊福部昭:土俗的三連画
和田薫:《交響曲 獺祭~磨 migaki~》第 2 楽章“発酵”

J.シュトラウスⅡ世:シャンパン・ポルカ
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
ペルト:カントゥスーベンジャミン・ブリテンへの哀悼歌
ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲《展覧会の絵》より バーバ・ヤガー~キエフの大門

(アンコール)
グリーグ:ホルベルク組曲より「サラバンド」





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落合陽一さんが日本フィルとつくる、
視覚・嗅覚・味覚とともに聴くコンサート。
映像と演奏が美しくリンクして感動。
特に後半、ペルトとムソルグスキーは圧倒的!!





「醸化」は落合さんの造語。
じょうか=浄化と音は同じ。
でも醸は、もっとぬめっとしている。発酵しているからね。


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こちらが入場の時に配られたもの。
音楽と醸化が結びつくのかな?


コンサートの中で落合さんと司会の方から
「開けてみましょう」と指示が。
香りは、落合さんが調合したという3種類。
演奏される曲のイメージなので
森や草の香り、ワインの香り、そして馬小屋の○○○のニオイw

そして味覚はワイン、を連想させるブドウのグミ。
このグミを食べると落合さんの思考回路に追いつけるらしい?!!


しかし、これらは演奏中は遠慮しなくてはならないので
香りと味を覚えておいて、音楽を聴くw
だから、やはり音楽とリンクした映像はダイレクトに心に届く。




                (以下2枚の写真はweb上の動画からお借りしました)

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隣の小ホールで、これまでの演奏会を振り返る展覧会が行われていました。
この演奏会は今年で5回目なのですね。
そういえば、耳で聴かない演奏会=音を振動にして伝える、
という企画があったのを思い出しました。

ホントに、落合陽一さんには周回遅れで(1周どころじゃないw
最近、某国営放送で数週間にわたって落合さんの番組があり
ちょっとだけ詳しくなったわけです~。

来てみたら、プログラムはとても良いし
日本フィルの演奏もすばらしいし
ナマの良さを、またまた実感したのでした。





そうそう、ホールの外には落合陽一さんの作品が展示されてました。

「醸化するモノリス」






堅い岩に見えたものが、溶け出したように変化する不思議。
人工の滝と妙に調和した得体の知れない時間と空間を
飽きることなく 楽しんだ。。





























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バッハ結婚300年〜ケーテンの愛 [コンサートの記憶]

バッハ・コレギウム・ジャパン 第143回定期演奏会
           ~東京オペラシティ コンサートホール

(プログラム) オール J. S. バッハ

管弦楽組曲 第4番 BWV 1069

アンナ・マグダレーナの音楽帖より歌曲集
「ジョヴァンニーニのアリア」BWV518
「御身が共にあるならば」BWV508
「汝、汝、ヤハウェよ」BWV299から第1,3,8節
レチタティーヴォ「私は、満ち足りた」~アリア「眠るがよい、疲れた眼よ」BWV82より

ブランデンブルク協奏曲 第5番 BWV 1050

  ー休憩ー

カンタータ第120番a 「主なる神、万物の支配者よ」BWV120a

(アンコール)
J.S.バッハ:ミサ曲ロ短調 BWV232 第2部ニーケア信経より
      「来たるべき世の生命を待ち望む」


指揮:鈴木雅明

ソプラノ:松井亜希
アルト:青木洋也
テノール:櫻田 亮
バス:渡辺祐介

オルガン:大塚直哉
ヴァイオリン:若松夏美
フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子

合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

            (今年5月の振替公演)





空気を震わせて飛んでくる
美しい合唱と力強い管弦楽!

奏者と同じ空間で
音楽に浸れる幸福感。。


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BCJの生演奏を聴くのは本当に久しぶり!
管・打楽器が活躍する管弦楽組曲第4番を聴くうちに
心躍る感覚が蘇ってくる。


指揮の鈴木雅明氏の楽しく明晰な解説の後
「アンナ・マグダレーナの音楽帖」からの声楽作品を。
バッハがソプラノ歌手だった妻のためにかいたのは
どれも可愛らしい曲ばかり。

そう、今年はバッハが2度目の妻と結婚して300年。
アンナ・マグダレーナはバッハの16歳年下。
きっと花のように愛らしく美しい人だったに違いない。

二人がケーテンで過ごした頃
そこは音楽に造詣の深いレオポルト候がいて
とても幸せな時代だったという。



愛を語るような松井亜希さんの歌は
やわらかな情感にあふれ
心が揺れ 涙が。。


"Bist du bei mir" BWV508 

Bist du bei mir,
geh ich mit Freuden
Zum Sterben und zu meiner Ruh.
Ach, wie vergnügt
wär so mein Ende,
Es druckten deine schönen Hände
Mir die getreuen Augen zu.

あなたがそばにいてくだされば
私は喜びのうちに向かいます
死と安らぎへ
ああ どんなに幸せでしょう
私の最期の日は



・・・この作品はピアニストにも人気が高く
最近では、ラン・ランの思い入れのある演奏がとてもステキ。
ダニール・トリフォノフの新譜にも入っているそうなので
聴くのが楽しみ~♫



さて、バッハ家は子どもがたくさんいたので
「家族で合唱もできたに違いありません」
と雅明氏。
4人での讃美歌の合唱は
そんな幸せな家庭を垣間見るよう♡


ここまで、通奏低音のみの伴奏だったけれど
小さなオーケストラが加わる。
松井さんの歌は本当に表情豊か。

雅明氏によれば、BCJの定期演奏会で
いくつもの小品をプログラムしたのは、初めてだったとのこと。
しかも、バッハの作品は99%録音済みで
残りはこの「アンナ・マグダレーナの音楽帖」だという。
わー、ぜひ録音してくださ~い!




さて、再び管弦楽だけの演奏。
しかし人数が少ないなあ
と思ったら、なんと!たった7人で
「ブランデンブルグ協奏曲」の5番をやってしまうっ!

以前、佐藤俊介さんがオランダバッハ協会と来日して
同じく7人で演奏した時もビックリしたっけ。
それは熱い演奏だったと記憶しているけど
この日はとても流麗。
フラウト・トラベルソの清明な音色が風のようにそよぎ
それは爽やかな協奏曲に。





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後半のカンタータBWV120aは、全ての曲がすばらしくて
1曲ごとに拍手したかった!

結婚式のためにかかれたもの、ということで
冒頭の合唱曲はトランペットとティンパニが派手に活躍するんだけど
これ、ミサ曲ロ短調の中の曲にそっくり!
バッハは「転用」といって、
いわゆるセルフカバーを頻繁に行っていたそうです。


結婚式のための作品だけあって、幸福感に満ちた音楽が続き
「婚礼の後で」という第2部へ。
ここで、大塚直哉さんのポジティブ・オルガンが超絶技巧!
無窮動のオソロシイ早弾き!
これは無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番の編曲。
ヴァイオリンで弾くならまだしも、それよりもスピードアップという凄さに
まさに度肝を抜かれたのでした!

素晴らしい演奏の連続の中でも、超絶すばらしかったのは
アルトの青木洋也さんのアリア。
はじめの
「Herr」(主よ!)
という高音の歌い出し。
キラキラと輝く陽の光のような、
硬質だけど包容力のある声が
ホールいっぱいに響く!
テノールの櫻田亮さんとのデュエットは
のびやかで
美しい鳥が羽ばたくような
自由で幸せな夢。。

青木洋也さんの歌は
「今までで一番良かった!」
を更新中♡♪♫


カンタータは祝福の合唱で閉じられる。

大喝采!





そしてアンコールは
このカンタータの冒頭合唱から転用された
ミサ曲ロ短調!

さあ
ひとりも乗り遅れるな!
突き進む先を見据え
心を合わせよう。
必ず、その時が来るから!


これが未来への希望。
そして愛。
しっかりと受け止めよう
この両手で!










































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OZONE 60 in IWAKI    [コンサートの記憶]

小曽根真 60TH BIRTHDAY SOLO
           ~いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール


(セットリスト)
Makoto Ozone:Gotta Be Happy
        Struttin' In Kitano
Moszkowski:20 Petit Etudts Op91 No.8 b-moll Moderato
Makoto Ozone: Need To Walk
Mozart:Eine Kleine Gigue K.574 G-dur
Prokofiev:Piano Sonata No.7 Op.83 3rd mov. Precipitato

Ravel:Piano Concert in G-dur 2nd mov. Adagio assai
Makoto Ozone:The Puzzle
        Listen..
        O'berek.
        For Someone

(アンコール)
Chick Core:Spain





オーロラのような
美しい響きのゆくえを追う
夢のような瞬間

タイトなリズムと
炸裂するピアニズムに圧倒される幸せ

様々な語り口で紡がれる音楽は
まるで映画のよう!

気持ちを込めて弾くピアノから
あたたかい愛が伝わってきて
涙…



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一音ずつ打鍵される かっきりした高音
響きを確かめ、さらに音が増えていく
ふと静寂

そして あの曲が始まる。
イントロはゆっくりと かみしめるように
ギア・チェンジ!
風のような疾走!
かと思えば
ちょっとスピードをゆるめて
景色を眺めながらドライブ・・
Gotta Be Happy
なんてステキなストーリー!

そんなふうに、この日の小曽根さんは
いろんな物語を紡いでくれた。



Struttin' In Kitanoでは
ミュージシャンの演奏の間に語られる
マダムの歌のオシャレだったこと!
見事に音色を変化させて
役柄にスポットを当てる、ステキなピアノ。



そしてモシュコフスキーのエチュードでは
クラシカルな音にフォーカス。
クリアなサウンドで弾かれる即興は
とても素直で愛おしい。



最近、ブルースとデキシーランドに気持ちが向かっているという小曽根さん。
ブルースのNeed To Walk
あれ?今日は「身体が横に成長しちゃったから歩かなきゃ」という前フリがなかったな。
そしたら不思議なことに、ジャンクフードをムシャムシャ食べてる光景が目に浮かぶ!
ウォーキングとは程遠い、重たいバウンスとアコード。
あらら小曽根さん、ダイエット諦めちゃったのかしら?
そういえば、お顔のふっくらが、さらに・・


拍手が鳴り止まぬうちに弾き始めるモーツァルト!
さっきまで太いベース音を繰り出していた、その同じ手が
こんなにも軽やかなパッセージを奏でるなんて。
なんてまろやかな音色だろう。
ひとつぶ、ひとつぶが
明るくてニコニコしてる。
え、もしかして小曽根さんっ
真央くんのヴェルビエ、モツソナを聴いていた?!
と思うほど、あの「モーツァルトの再来」の音色によく似ている。
幸せな音は 幸せな音楽を紡ぎ
その先の即興も、ごく自然にザルツブルクの風になる。。



前半の最後はプロコ!
運命を握られ
入り組んだ迷路を疾走するコースター!
原始から近未来へ
時空を越えるタイムマシン
漆黒の闇と貫く閃光・・

これはまさに「戦争ソナタ」。
オーケストラに負けない
大音量と迫力で弾ききった
ものすごいパフォーマンスに
茫然。。






後半は白から深い赤色のシャツにお召し替えの小曽根さん。
客席に笑顔で
「ただいま」

そして弾き始めるラヴェル。

落ち着いた佇まい
優しい瞳
想いを託せる安心感
夢とうつつの境がゆらめく
あたたかい光の中で。。


そんな極上のひとときを
誰も終わりにしたくない。
最後の音が
高く高く のぼっていっても。。。




打って変わってThe Puzzle
足を踏みならしながら
ガンガン攻めまくるオリジナル曲なんだけど
なんか余裕があるんだな。
そう、超絶スゴイ早弾きと爆音の連続を
平気な顔でやっている。
この方、60TH なんですよっw



次は「子守歌のような曲をかきたくて」できたという
耳を澄ませて・・Listen..
「子守歌なので、寝てもいいです」w
いやいや、寝られませんよー
こんなに幸せな時を
一瞬でも逃してなるものか。
優しく紡がれるピュアな音楽が
心から愛しい。。




さあ、 O'berek.!
何かを捜し求めているようなイントロ
遠くからやってきたものは何?
タイトに刻まれる拍子から
やがて激しいリズムが繰り出され
嵐の海に投げ込まれたように翻弄される。
狂乱が最高潮に達した時
ピアノが止まり、手拍子が打ち鳴らされる。
その瞬間、真っ白に輝くライト!
まさに劇的!
大喝采!!




セットリストの最後は
「誰かのために」

静かなピアノの響き
感謝の想いが交差する
ほんとうに
ここに来て良かった。
このピアノが聴けて良かった。
あふれる涙。。




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アンコールは、別の曲を考えていたのに
「チックさんがここに来ている気がするので」
と小曽根さん。
「イタリア・・おしい! スペイン!」←

言わずもがな、盛り上がりましたよ!
最高の幕切れ。

















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さて、このホールまで遠かったので特急で小旅行。(世界の車窓からw)


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駅から徒歩15分。ちゃんと行き着けるか心配だったので
ホールが見えた時はホッとしましたw

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ほんとうに響きの良いホールで
スタインウェイが2台もあるという贅沢さ。
当日、小曽根さんが選んだ1台がステージに。


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小曽根さんが、よく言っている
「ソロの時はお客さんがパートナー」
まさにそれが実感できた、すばらしいコンサートでした。
遠かったけど、行って良かったなあ(しみじみ)。。


















































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