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Leipzig Recital        [コンサートの記憶]

ラン・ラン「ゴルトベルク変奏曲」
       ~ライプツィヒ・聖トーマス教会



楽曲を深く隅々まで吟味した上で
ピアノによる表現を追求した演奏に心を打たれる

それぞれの変奏の
色合い、感情、時の流れの移ろいの愛しさ

終曲のアリアに還り着くまでのドラマティックな旅。。





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ラン・ランはポリフォニーの全てのフレーズを
大切に聴き、奏でる。
たとえば弦楽器のように柔らかく。

平均律の楽器で弾くと避けようのない音の濁りは
ダイナミクスとアーティキュレーションを巧みに変化させ
美しい響きを導き出す。
まるで、ピアノを想定してかかれた楽曲のように。

けれども、元々が2段鍵盤のチェンバロのための作品なので
テンポの速いものをピアノで弾くのは困難なはず。
しかしラン・ランは手を交差させ
そのずば抜けた指さばきで
いとも簡単そうに軽やかに奏でる。

変奏曲ひとつひとつのキャラクターは
無限ともいえるタッチを駆使し
音色を変化させて描き分けていく。
その見事なこと!

そして、それらが連なって
大河のような物語があらわれる。

物語の語り部であるピアニストは
身体全体を使って音楽を表現する。
まるで役者のように!

深い洞察とともに読み込まれ
咀嚼された音楽は
彼の心からの自然の発露のように
ピアノを通して語られる。
もちろん暗譜で。
聴く者はドラマを観ているように
そのストーリー展開を固唾をのんで見守る。

そこには、バロックの次の時代
古典からロマン派さえも予感させ
遠い未来の近代の香りさえもただよう。


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ラン・ランは「ゴルトベルク変奏曲」の録音をするにあたり
何年もかけて楽譜を読み込み
バッハを研究する演奏家達に教えをあおぎ
さらにはバッハの足跡を辿るなど
様々なアプローチで研鑽を積んできたそうです。
そうして到達したのは
装飾音など、時代の様式を損なうことなく
バッハが定めたフォルムの中で
自由にピアノを歌わせ、響かせる
彼ならではの演奏でした。


リリースされたCDはスタジオでの録音の他に
今年3月の演奏会の録音がセットになっていると知り
その演奏会ならDVDで観たい!と思いました。
その思いが通じたのかw
なんと、レコード会社が映像を配信してくれたのです!!
もちろん有料ですが、これを観ないでどうするっ!
だって、ラン・ランの演奏は身体の動きも音楽の一部なのだから。

そして何より、以前に訪れたことのある聖トーマス教会での演奏会だもの。
現地の空気を知っていると、たとえ配信でも
心はそこに飛んでいくことが出来る。


ラン・ランが演奏するピアノは
バッハが眠るお墓の前に置かれ
満場の聴衆が耳を傾けている。。





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それにしても、どんどん集中力が増していくのは凄かった。
フランス風序曲で始まる第16変奏からの後半は
まるで憑依したかのような演奏に!

短調の変奏曲は歌詞があるかのように
せつせつと奏でられる。
ゆるやかな、夢のような時。。

そして第29変奏は
コンチェルトさながらに豪快にピアノを鳴らす!
そこからクオドリペットになだれ込むと
自由を謳歌する歌が生き生きと歌われる。

終曲のアリアは静謐に。
最弱音が空気にとけていく。。









































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The Little Singers of Tokyo      [コンサートの記憶]

東京少年少女合唱隊 第68回定期演奏会
            ~東京カテドラル聖マリア大聖堂


指揮:長谷川久恵 志田雄二*
合唱:東京少年少女合唱隊/コンサートコア・ジュニア・カンマーコア・コールス
オルガン:浅井美紀*

(プログラム)
パレストリーナ:ミサ・ブレヴィス
レイトン:「ミサ・コーネリア」op.81より *
クシェーネク:5つの祈り op.97
シェーンベルク:「3つのドイツ民謡」op.49より
           仲良し娘二人して
           ぼくの心は変わらない
マーラー:「さすらう若人の歌」より 愛しきひとの蒼きふたつの瞳
     「若き日の歌」より 引き裂かれ見捨てられ

(アンコール)
平井夏美:瑠璃色の地球









透明な歌声が紡ぐポリフォニーは

美しく絡み合い

調和しながら

大聖堂を満たす


そうして

長い長い残響音になって

天へ上っていく




忘れていた無垢な心

幸せな夢が ここに。。








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こんなに美しいアカペラの合唱を聴いたのは初めて!
まさに倍音浴です~。


感染対策として、透明なアクリル板で作ったカプセルに入りマスクをしての歌唱。
歌いにくかったと思うのに、大変さを全く感じさせない演奏でした。

16世紀のパレストリーナから現代ものまで、という素晴らしいプログラムを
小中学生が歌ってしまうというのは本当にすごい。
OB、OGが参加しているとはいえ、レベルの高さに圧倒されました。







青木洋也さんは、以前この合唱隊にボーイソプラノで在籍。
今回ももちろん歌っていましたが
つい先日までオペラをやってましたよね?!
ほんとに、すごすぎだわ!!

(この演奏会は同じプログラムで3回、日にちを開けて行われました。
私が聴いたのは2日目です。1日目はオペラ公演の翌日だったという驚愕!)

















































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Rinaldo      [コンサートの記憶]

鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.2 ヘンデル 歌劇 『リナルド』
               ~東京オペラシティ コンサートホール

指揮・チェンバロ    鈴木優人

管弦楽         バッハ・コレギウム・ジャパン

(キャスト)
リナルド    藤木大地(カウンターテナー)
アルミレーナ    森 麻季(ソプラノ)
アルミーダ    中江早希(ソプラノ)
ゴッフレード     久保法之(カウンターテナー)
エウスタツィオ    青木洋也(カウンターテナー)
アルガンテ     大西宇宙(バリトン)
魔法使い     波多野 睦美(アルト)
使者       谷口洋介(テノール)
セイレーン(人魚たち)    松井亜希・澤江衣里(ソプラノ)


(演出) 砂川真緒
(ドラマトゥルク)菅尾友


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ホールに入ると、いきなりこんなチラシが!
え?
今日はヘンデルのオペラじゃなかったの?!



ステージにはチェンバロ2台にオルガン、
オリジナル楽器で演奏されるのは
確かにヘンデルが300年前にかいた音楽。

ところが
リナルドは胸に大きく「R」と書かれたトレーナーを着たオタク少年。
フィギュアで遊ぶリナルド演じる藤木大地さん、
ホントにヲタクなのでは?と思うくらいハマってますw

そうやって始まったオペラは
RPGをリアルに体験しているようなワクワク感!
ストーリー展開の速さは手に汗。

まさに粒ぞろいの歌手達が
次々に繰り出すアリアはどれも絶品で、
3階まで綺麗に飛んできました♪♫

それにしてもBCJの管弦楽の超絶なこと!
舞台の上で演奏しているので
歌手とのやり取りが良く見えて感激。
三ノ宮さんのオーボエ
水谷さんのリコーダー
山本さんのチェロ
そして野入さんのリュート・・
と、挙げればきりがありません。
もう、全員が本当に上手で
しかも楽しそうに弾いているのがすごいっ!
優人さんの指揮に皆がシンクロして
エネルギーあふれる演奏が
アグレッシブに繰り広げられます。

そうそう、忘れちゃいけない
大塚直哉さんのチェンバロ!
優人さんとのツインチェンバロには度肝を抜かれましたよ(かっこええ~

長い棒の先に付いた鳥を操ったのも管弦楽の方々。
夏美さんは、いつもボウを使っているのでとってもお上手!
優人さんは片手で指揮をしながら鳥を操れるの、すごいよw

セミ・ステージ形式ということですが
歌手は全員、衣装を付けてヘアメイクもバッチリ。
さらに照明がとても凝っていたり
生音の効果音も入って、
メリハリがきいた演出にワクワク。
3時間を超える長尺が あっという間でした!



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このオペラの中で一番有名なアリアは「私を泣かせてください」。
この話の流れの中で聴くと、単独で聴くよりずっと胸に迫ります。
森麻季さんの美しいソプラノに
穏やかな弦楽が寄り添った演奏は、この日の白眉でした。


そして、客席を沸かせたのは中江早妃さんの魔女!
まさにハマリ役~w
歌も演技もサイコーにキャラ立ってました。
そういえば、中江さんと大西さんの言葉がきれいでした。
この二人が歌った時、初めて
「あ、これはイタリア語のオペラだったのね」
と気付いたのでしたw

何はともあれ(え?
全員日本人でオペラを上演したというのは
とても意義があると思うのです。
この状況下で、外人歌手の来日が出来なかったため
オールジャパンによる上演になったのですが
急な代役にもかかわらず
役になりきって、すばらしい演奏を披露してくれた事は
まさに
ブラボー!!!!!
(ホールで大声を出してはいけないので、ここで叫んでおきます)



ところで、この作品はカウンターテナーが3人も出演するのですが
これは珍しいものでしょうね。
バスはひとり。
テノールに及んでは、たった一言しかありません!
ヘンデル、何があった?w

カウンターテナーの面々の中で 
今回は、青木洋也さんの硬質で芯のある声が
この作品と役柄に良く合っていたと思いました。
バロックの唱法も安定していて、とても聴きやすかったなあ。
旋律の装飾も、とても自然。
第2幕の初めの憂いを含んだアリアの陰影の表現
そして、ラスト近く
「シオンの丘に栄光の真理が輝く」の
心躍る華やかさ。。




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              (この写真はweb上からお借りしました)




それにしても、優人さんのプロデュースぶりは本当にすごい!
その上、本番で指揮とチェンバロ演奏をしてしまうって、超人です。
バロックオペラ、ぜひまた聴きたいですね。

そういえば
私が初めて青木洋也さんの歌を聴いたのはオペラだったのです。
その公演の指揮が優人さんだったという、レアな事実!
それは、優人さんにとって初めてのオペラ指揮だったそうですが
あれから、二人ともスゴイ進化を遂げてますね。
これからの展開が楽しみ楽しみ♡





























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