SSブログ

Jean Rondeau - Clavecin    [コンサートの記憶]

ジャン・ロンドー チェンバロ・リサイタル
           ~東京文化会館 小ホール

(プログラム)
ラモー :プレリュード イ短調 
     組曲 イ短調 (抜粋) – 新クラヴサン組曲集より
     アルマンド /クラント/サラバンド /3つの手/ガヴォットと6つのドゥーブル


F.クープラン :プレリュード 第1番 ハ長調 – クラヴサン奏法より
       クラヴサン曲集 第3組曲より
        暗闇(アルマンド)/陰鬱(サラバンド) /お気に入り(2つのシャコンヌ-ロンドー編)
ロワイエ:クラブサン組曲集第1巻より
        敏感/スキタイ人の行進 

(アンコール)
F.クープラン:神秘的なバリケード
ラモー:未開人
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲より アリア


[使用楽器] ヤン・カールスベーグ 2000年製作(オランダ)
      ジャーマン(ミートケ)・モデル
      (梅岡サービス所有)





その音色は 
まるで
蓮の葉を転がる水滴

どこまでも滑らかで
静謐なフランスバロック

艶やかな装飾は
蝋燭の炎の揺らめき。。




                  (Clavecin クラヴサンはフランスでのチェンバロの呼称)
'19Novジャン・ロンドー フレンチ1.jpg



長髪を結わえて現れたジャン・ロンドー、
この日は躊躇なくステージに現れ
少し微笑んでおじぎをし
すぐにクラヴサンの鍵盤に手を置いた。

やや長めの即興演奏は
私を現実の世界から時を越え
古い時代へといざなう。

フランスの宮廷で奏でられていた音楽は
その絢爛豪華な建築物、美術工芸品のように
旋律をさまざまな装飾音符で彩り
柔らかな空気をまとって
羽のように舞う。
優美に下降するゼクエンツは
お城の秘密の部屋へ降りていく螺旋階段のよう。。



私は ロンドーが弾くラモーのサラバンドを
動画投稿サイトで見つけ、なんども繰り返して聴いていた。
古い教会を改装したホールは
美しいステンドグラスで囲まれ
そこで演奏するロンドーは
空間からインスピレーションを得て
明るく毅然とした作品を
のびやかに奏でている。

その、同じ曲を
目の前で本当に演奏するロンドーがいる!
夢ではないのか?
こんな幸せな瞬間に出会えるなんて。。



ゆるやかなテンポのものは
F.クープランの作品も同様で
まるでフランス語で語っているような
柔らかで気品のある旋律が交差する。
憂いのある表情が
エレガントで少しだけコケティッシュ。


ところが、アップテンポになると
すっごいノリの音楽に豹変する!
まるでプログレ!
恐ろしいくらいの超絶技巧!!
そして、どんなにテンポが速くても
音色は美しさを保っている。
雑なタッチがひとつもない!
一体、彼の身体能力はどうなっているのだ?!
もうノックアウト~!




ただの1度も譜面を置かなかったジャン・ロンドー。
今回のフレンチ・プログラムは
彼の母国でもあるフランスの作曲家の作品によるもの。
時代は異なっても
同じ土地に生まれ、同じ言葉を話していた作曲家の思考が
ロンドーの中ですんなりと租借され
彼自身の発露のように奏されたのは不思議ではない。




そして、この日も日本語での挨拶の後、アンコールを3曲!

最後のゴルトベルク変奏曲のアリアが始まった時
もしかして
このまま変奏曲を全部弾くのかしら?
弾いてほしい!!
永遠につづいてくれたら。。
と思ったのは私だけではなかったはず。。




             (この写真はweb上からお借りしました)

'19Novジャン・ロンドー フレンチ2.jpg




ジャン・ロンドーは今や演奏旅行で世界中を飛び回っています。
今回もオーストラリアで何カ所も演奏会をした後、日本に来てくれました。
彼の魅力は、その素晴らしい演奏はモチロンだけれど
その背後に感じられる、真摯に音楽に向き合っている誠実な人柄。
そして、CDのライナーノーツを自ら書き上げる深い洞察力。
そこには哲学的な思考とファンタジーに満ちた感性が同居しているのです。

次にジャン・ロンドーの演奏を聴く時は、さらに深化しているのでしょう。
まだまだ若い彼(1991年生まれ)がどんなふうに人生を歩んでいくか、目が離せません。











おまけw

'19Novジャン・ロンドー フレンチ3.jpg


ロンドーくんのサイン会、長蛇の列でした!
私が東京での演奏会を2回聴いたのを覚えていてくれました~♪♫
握手した手は、これまでの鍵盤楽器奏者とまるで違って
とても肉厚でガッシリしていて、驚きました。
ああ、この筋力があるからこそ
クラヴサンの繊細な鍵盤がコントロールできるのだ!!
超スローで最弱音を奏で、
恐ろしいスピードで跳躍し正確に打鍵し、
そしてクラヴサンを深く美しく鳴らすことが出来るのは
この掌と指があるから!
と、深く納得したのでした。























nice!(4)  コメント(0)