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歌道Ⅱ       [コンサートの記憶]

加耒徹 バリトンリサイタル2019  歌道Ⅱ(東京公演)
                  ~豊洲シビックセンターホール

バリトン:加耒徹
ピアノ:松岡あさひ

(プログラム)
《ヘンデルのオペラアリア》
・歌劇『リナルド』より "Sibillar gli angui d'Aletto"
・歌劇『アグリッピーナ』より "Pur ritorno a rimirarvi"
・歌劇『ロタリオ』より "Se il mar promette calma"

《日本歌曲》
詞・曲/宮本益光:平和へのソネット
詞/高村光太郎・曲/加藤昌則:レモン哀歌
詞/林望・曲/伊藤康英:いんへるの
詞/谷川俊太郎・曲/松岡あさひ:うみのきりん
詞/宮本益光・曲/信長貴富:貴種流離譚(祝婚歌)

ロベルト・シューマン   
歌曲集『詩人の恋』Op.48 全曲(詞/ハインリヒ・ハイネ)

(アンコール)
R.シューマン:献呈





'19Nov加耒徹1.jpg



ホール中に鳴り響くオペラアリア!

まさに圧倒的なバリトン・ヴォイス。
金色の粒子が降り注ぐような
その豊かな倍音に
心をぐっと掴まれる。

装置もないのに
アリアを聴くうちに
ホールは華やかな劇場になり
衣装を着けた歌手が
スポットライトの中央にいるかのよう!



続いて邦人作品。
声ががらりと変化する。
同じ人が歌っているとは思えない。
落ち着いた、端正な歌声で
日本語を大切に大切に紡いでいく。

同時代を生きる作曲家の曲は
言葉が理解できることもあり
喜びや悲しみ
そして怒りも
ダイレクトに飛び込んでくる。

その中で最後に演奏された「貴種流離譚」は
我が子の成長を見守る親の心情が描かれており
最近パパになった加耒さんの気持ちが入り込んでいて
ほんとうにステキだった。。





そして圧巻はシューマン「詩人の恋」!

ロベルト・シューマンが
長く思いを寄せていたクララと結婚した年に
彼はたくさんの歌曲をかいた。
どれも歴史に残るような優れたものばかり。
その中のひとつ「詩人の恋」の詞は
ロベルトに大きなインスピレーションを与えたのかもしれない。


美しいドイツ語で歌われる情景や心のひだ。
ロベルトとクララが暮らしていたライプツィヒの
落ち着いたトーンの街並みに
柔らかな旋律が流れていくよう!
抑制された表現に心がゆさぶられる(涙。。





全く異なる3つの世界を見事に聴かせてくれた加耒徹さん。
これが実現できたのは
ピアニスト松岡あさひさんがいてこそ。
ヘンデルのオペラの古楽オケのような軽やかさ。
それは見事に情景を描き分けた日本歌曲。
そして
本当に弾きにくいシューマンを
呼吸しているように自然に演奏してしまう!

松岡さんが創り上げた素晴らしい音楽空間は
ホントに胸きゅんだったよ。

(F社のピアノじゃなかったらなー・・というのは独り言w)


アンコールは「献呈」以外ないでしょう~!
シューマンですからね。
大喝采!盛り上がりました♫♪



'19Nov加耒徹2.jpg




終演後は挨拶のために来場者全員が並んだのではないかと思われる長蛇の列。
一人一人に丁寧に挨拶する加耒さん、そして松岡さん。
すばらしいサービス精神♡

そうそう、
このホールはステージ後方の窓から外が見えるのですが
オペラの時は開いていたのがシューマンでは閉じる
というように雰囲気を楽しませてくれたのも良かったなあ。

こんなふうに、聴く人を楽しませるには労をいとわない加耒さん。
その歌の道が
これからも祝福されたものでありますようにと
願わずにはいられません。




























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