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Ciaccona         [コンサートの記憶]

イザベル・ファウスト
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ 全曲演奏会
                 ~東京オペラシティ コンサートホール


(プログラム)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006
      無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 BWV1003
      無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004

(アンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV1001 より 3. シチリアーノ







たった4本の弦から放たれる
千変万化の音色!

多彩なフレージングで語られる
深い愛の物語に惹き込まれ
心が震える。。




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弾き始めた瞬間、
ひとつひとつの音色が全て異なっていることに驚く。
それは、ただ違って聞こえるというよりは
それぞれの音に性格があるかのよう!
音たちは有機的に連なり、呼吸して
フレーズを創りあげていく。

最初に奏されたホ長調のパルティータは
輝かしく、透明感のある響きに満ちていて
爽やかな風の中
木もれ日の道を行くような幸福感が歌われる。
こんなに優しい「バッハ」を、初めて聴く。
新鮮で、けれども懐かしい夢のよう。。






その音色が、次のイ短調のソナタでガラリと変わる!
浮遊感のある音から質量のある音へ。
静止した風景。
深淵な、モノクロームの世界。
弓を持ち替え、強い意志をもって弾かれると
こんなにも描き分けることができるのか。

楽器はストラディヴァリウス。
弓はバロックボウ。
彼女の高い技術で自在に操ると
ポリフォニーもくっきりと浮かび上がってくる!

さらに
とても広いダイナミクスの
グラデーションの美しいこと!
柔らかい光に煌めく
霧のような音の粒子がうずまいて
奥行きのある立体的な世界が
目の前に現れる。






ニ短調のパルティータも異なる弓で奏される。
しなやかで強い意志。
聖書の
「言葉は肉になる」
という節を ふと思い出す。
語られた物語は、奏者の真心を通して
自身の生命となり息づく。

そして
Ciaccona(シャコンヌ)。
果てしない祈りの道を
一歩一歩 
ひたすら歩み続ける旅人。。
心の中の風景は
おのれを見つめる鏡。

吟味された言葉で
真摯に語られる物語は
深い愛に満ちている。。




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               (この写真はweb上からお借りしました)




シャコンヌを大伽藍のように演奏する人が多いけれど
この日の演奏は、全く大げさなことをせず
まるで神のしもべが、淡々と語るよう。
これこそ、圧巻!
深い感動がホールを支配し
長い長い静寂。。
そして
喝采!
涙が止まらない。。







長い拍手に何度も呼び戻され
最後に感謝を込めて奏されたアンコール。

今まで生きてきた道
そして、これから見る風景。
深い愛と希望のシチリアーノ。。






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今年の初め、
イザベル・ファウストさんが日本で協奏曲を弾いた演奏会が
春ころにテレビで放映されました。
その時のアンコールがニコラ・マッティスという
バッハとほぼ同時代の作曲家の作品でした。
その演奏がとても印象深かったため
なんと、初めて女性ヴァイオリニストの演奏会のチケットを買いましたw

ファウストさんはバロック音楽に精通していて
バッハの録音の時はバロックボウを使うと知り、楽しみにしていたのですが
予想をはるかに上回る演奏に驚愕したのでした!
今まで、聴いたことのない
でも、説得力のある素晴らしいバッハ!

今年の演奏会ベスト1の予感です♪♡♬♡






























































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