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兎、波を走る       [カーテン・コールの後に]

*注 ネタバレあり*

NODA・MAP第26回公演
『兎、波を走る』
    ~東京芸術劇場 プレイハウス

作・演出 野田秀樹

<CAST>
脱兎:高橋一生 
アリスの母:松たか子 
アリス:多部未華子
元女優ヤネフスマヤ:秋山菜津子 
第一の作家?:大倉孝二 
シャイロック・ホームズ:大鶴佐助 
東急半ズボン教官/第三の作家?:山崎一 
第二の作家?:野田秀樹        他


<STAFF>
美術:堀尾幸男
照明:服部基
衣裳:ひびのこづえ
音楽:原摩利彦
音響:藤本純子
振付:井手茂太
ヘアメイク:赤松絵利
人形:沢則行
映像:上田大樹
舞台監督:瀬﨑将孝
プロデューサー:鈴木弘之





大笑いしてるうちに
気づいたらボロ泣き。。

脚本、演出、音楽、照明
そしてもちろん役者さん達も
全てが最高の舞台!!



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「不思議の国」に行ってしまったアリス。
それを探し続ける母。

潰れかけた遊園地で上演する台本を
作家に書かせようとする元女優。

物語は複雑に絡み合っている?
それともシンプル?

妄想の中で
これでもかと浴びせられる
言葉遊びの連続技!

不条理の世界にどっぷりとハマると
もはや、それがリアルとなる。

往年の作家の想像力は
現代ではAIが担うのか?

家族、親子関係とは。
もうそうするしかない国は
このお芝居の中ではない?

本当に存在した事件、
それに関わった人々を
決して忘れてはならない。。



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もの凄いスピードで台詞が飛び交うのに
とてもクリアに聞こえてくる。
野田秀樹さんが
「こんなキャストが揃うのは
何十年も芝居をやっていたご褒美かな。」
(本公演パンフレットより)
と言っていた通り。
加えて、全員が良く動くこと!
走り、跳び、ステップを踏む。

あたかも仮想現実のような
シュールで美しい舞台に
心に寄り添う音楽が響く。。



拉致問題の風化を危惧する。
そんな重い柱が根底にあることが
明らかになるにつれ
涙が止まらず。。

そして成田闘争や
赤軍派、ハイジャック事件・・
混沌とした時代の
空気を、手触りを
見事に蘇らせる。




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学生時代、私は劇場に入り浸っていた。
安部公房、つかこうへい、清水邦夫
そしてベケット、ブレヒト。
不条理と妄想の世界に生きていたw

だから、野田さんのお芝居は
私にとってド真ん中だった。
ビュンビュン飛んでくる台詞を
パシバシとキャッチする小気味よさ♡

リアル過ぎる現実を背負って
妄想の世界に浮遊する
お芝居の時間は最高すぎる。。

野田秀樹さん主宰の舞台を観たのは
これが二度目。
前回も(というには、あまりにも昔w)
とても感動した記憶がある。

そうそう、
私がこの公演を観たいと思ったきっかけは
野田秀樹さんのインタビュー記事の中に
大鶴佐助さんのお名前を発見。
佐助さんは唐十郎さんの息子さんではないですかっ!
野田さんは佐助さんの声に惚れ込み、
このお芝居のオファーをしたそうです。
こ、これは行かなくてはっ!

ところで、
この公演のチケットが争奪戦になったのは
野田秀樹さんの2年ぶりの新作!という理由の他に
高橋一生さんが出演されていることもありそうです。
高橋さんは演技が素晴らしく、超イケメンで
ものすごい人気らしいです。
知らなかったなんて言うと
ファンの方に殴られますね。
でもって、初・高橋一生を
いきなりナマで観てしまったのですが
眼に麗しい容姿♡声も抜群♡
そして実力も最高♡
これは人気があって当然!
と納得したのでした。

他の役者さんたちも
野田さんが仰っている通り
全員がすばらしくて、
まさに上質の舞台でした。

そして、美術・照明・音響・振り付け等々
全てがハイクオリティなのだけど
語彙不足で語れなくて
本当に申し訳ないのです(泣

唯一、音楽の事。
このお芝居のためにかかれた
優しさと愛に満ちた楽曲。
たゆたうようなストリングスに
舞台がつつまれた時の
この上ない幸せ。。
作品の素晴らしさはもちろん、
弦楽奏者のみなさん、超GJ(拍手!!


そして「家路」。
元はドボルザークの交響曲第9番の
第2楽章なのだけれど
この部分が下校時間に
学校で放送されるようになり、
多くの人がこれを聴くと
夕刻を連想するようになった。
だから、
下校時間に拉致される場面で
これが流れた時は
号泣してしまうんです。
ベタなんだけどね。
あえて、これにしたところが
すごいなあと。

(以下は読み飛ばしてください笑)
これを演奏しているのが
イングリッシュホルン。
録音のメンバー表に
モガさんの名前を発見。
やっぱり、上手だなあ!
この方、葉加瀬さんに
姿を寄せすぎなのがチョットね。
なので敬遠しているのだけどw





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この公演に気付いた時には既に完売!
その後、追加席の販売があったのに
これも撃沈(泣
リセールやチケット交換サイト。
いろいろ試したけれど無理そう。
ということで、
当日券をゲットしよう!
長い時間並ぶらしいが
毎回、かなりの人数が入れると
SNSで知った。

そこで、並びましたっ!
ナント50番目www
私の後ろにも15人くらい。。
係の方が回って来て
「立ち見になりますが」
とおっしゃるので
「はいっダイジョブです」
と、にっこりw

開演1時間前に窓口が開き
販売が始まる。
列がノロノロと動き
ようやく私の番!と
お財布を出した時
「チケット、要りませんか?」
と、声を掛けられた(驚!
お友達が来られなくなったから
と、チケットを売って下さったのです!
(もちろん、正価で購入いたしました!)
なんとまあ、天の助け。
かなり良い席で座って観られて
本当にありがたかった(感涙

声を掛けてくれて海より深く感謝。
彼女とお友達に
良いことがいっぱいありますように♡



素晴らしい舞台は
このステキな出来事とともに
深く心に刻まれた。。




















































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Evening Concert with the Érard Piano    [コンサートの記憶]

チェンバーミュージック・ガーデン
エラールの夕べ 壮年ブラームス
         ~サントリーホール小

(出演)
ヴァイオリン:佐藤俊介
チェロ:鈴木秀美
フォルテピアノ:スーアン・チャイ
   *使用楽器:エラール(1867年製/サントリーホール所蔵)

(オールブラームス プログラム)
ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 作品100
チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 作品99
ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 作品101

(アンコール)
ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 作品101より 第3楽章






ブラームスが聴いていた音色で奏でる室内楽は
当時の風景と親密な空気を運んでくる

絶妙な歌い方
アグレッシブな会話に釘づけ。。




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モダン楽器の響きに慣れた耳には
少し無骨に聞こえるエラールピアノ。
ガット弦のヴァイオリンも
ヴィヴィラートを殆どかけず
ナマの音が真っ直ぐに飛んでくる。
まるで
土の道を馬車がゴトゴトと走っていくよう。。

それは、チェロも同じ。
モダン楽器なら
エンドピンから伝わってくる
地鳴りのような響きが
チェロの真骨頂と思うのだけれど。


ところが、
後半に3人揃って登場し
トリオで演奏が始まると
ガラリと変わった!

3つの楽器がとても良く響き
饒舌に歌いあう。
長い冬が終わり
一斉に花々が咲くように
柔らかな光の中で
ステップをふむように
奏者の心が一つになって
鮮やかな物語が繰り広げられた。


そして アンコールは
たった今、奏されたばかりのトリオ。

プログラム中の演奏と
全く違う!
少し勿体を付けて歌うピアノに
ヴァイオリンが応え
チェロが相づちをうつ。
柔らかな仕草
優しい微笑み

最高のひとときでした。。





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佐藤俊介さんとスー・アン・チャイさんのご夫婦。
登場する時の満面の笑顔は
それだけで幸せな気持ちになる。

仲むつまじい二人の家に
親戚のおじさんが来て
気楽な音楽をはじめた、つもりが
どんどん熱をおびて
丁々発止のかけ合いになった・・
というのが真相です(嘘w
でもね、
本当にそんな音楽が聴けて
最高でした!

































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Tenor      [カーテン・コールの後に]

テノール! 人生はハーモニー
        ~ヒューマン・トラスト・シネマ 有楽町

2022年製作/フランス
原題:Tenor

監督:クロード・ジディ・Jr.

マリー:ミシェル・ラロック
アントワーヌ:MB14(モハメド・ベルヘール)
                  他


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家族の絆そして友情・・
皆が複雑な思いを抱えて生きている中
主人公が自身の真の気持ちを模索する。

移民が住むパリ郊外の暗い街。
対して
パリオペラ座の絢爛豪華な光!


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(この写真はweb上からお借りしました。オペラ座の大階段)



ラッパーがオペラ歌手を目指すなんて
あり得ないかもしれないけれど
そんなファンタジーを信じたくなる
説得力のある映画。

主人公アントワーヌ役、MB14は
まさにハマリ役!
彼は本名モハメド・ベルヘール。
ビートボックスの世界チャンピオンで
この映画に出演のために
初めてオペラ歌唱の訓練を積んだそうだ。
そして、
オペラ教師のマリー役、ミシェル・ラロックの
凜とした佇まいと確かな演技。
また、人気オペラ歌手のロベルト・アラーニャの他
若手オペラ歌手も出演していて
彼らの歌の素晴らしさに圧倒される。

そして、ラストに主人公アントワーヌが歌う
「誰も寝てはならぬ」に号泣してしまうのでした。。


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(この写真はweb上からお借りしました。オペラ座のステージ♡)


オペラの作品が次々に歌われる中、
心に寄り添うような優しいピアノに耳を奪われる。
音楽はローラン・ペレズ・デル・マール。
ジブリの「レッド・タートル」他、
数々の映画音楽を手がけている方でした♪♫



ところで、帰り際にふと購入したパンフレット。
マリーがアントワーヌに宛てて書いた
手紙が載っていました♡
とても大事な場面だったので
もう一度読みたい!
と思っていたので、嬉しかったな。

あと、オペラ座の写真もね。
映画で見ると
本当にそこにいるような錯覚♡
ガルニエ宮は
きらきらで
ほんとうに美しかった~♡(懐



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(この写真はweb上からお借りしました)
























































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ピリオド楽器のショパン      [コンサートの記憶]

トマシュ・リッテル ピアノリサイタル 

   レクチャー&プレゼンテーション付き 
   ショパン国際ピリオド楽器コンクールに寄せて
              ~浜離宮朝日ホール

【第1部】レクチャー
「ショパン全書簡」が提示する新しいショパン像
 講師:関口時正(東京外国語大学 名誉教授)
 
【第2部】プレゼンテーション
「モダン楽器とピリオド楽器によるショパン演奏について」
 話・ピアノ:川口成彦

 聞き手(第1部、第2部とも):吉田純子(朝日新聞編集委員)

 
【第3部】リサイタル  使用楽器:1843年製プレイエル
 トマシュ・リッテル(第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者)

 ショパン:ノクターン第4番 Op.15-1
      ノクターン第1番 Op.9-1
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 Op.109
 モーツァルト:幻想曲 K.475

 ショパン:24の前奏曲 Op.28

(アンコール)
 シューベルト=リスト:影法師(「白鳥の歌」D957から)
 ショパン:マズルカ ホ短調 op.41-1



こんなに豊かに鳴り響く
フォルテピアノを聴いたのは
初めて!

抜群のテンポ感で駆け抜け
言葉を紡ぐようにフレーズを歌う。

モダン楽器では
決して聴けない解釈に
心踊る。

ノスタルジーではないピリオド!
最高でした!!




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トマシュ・リッテルさんを知ったのは
2018年ピリオド楽器のショパンコンクール。
もちろん、配信で見ていたのだが、
彼のピアニズムはコンテスタントの中で
抜群に優れていて
文句なしの優勝だった。
余裕さえ感じられる安定感。
それは、
ピリオド楽器に精通しているからこそ。
また、リッテルさんは
モダンピアノも弾きこなし、
コンクール受賞歴もお持ち(凄

いつか生演奏を聴きたいとの思いが
この日は漸くかなった。


そして、改めて
ナマ音は配信と全く異なることを痛感する。


意外に骨太なモーツァルト。
情緒のある、耳に心地よいベートーヴェン。

そして
ショパンは
ためらいなく
清らかな水のように流れていく。
もちろん
繊細な筆の運びは
随所に聴かれるけれど。

だから
24の前奏曲は
ほんとうに新鮮だった!

私は、この作品を
今初めて聴くのではないか
と、錯覚するくらい。

明るい日差しの中で
やわらかく微笑むショパン。
風がそよぎ
木々がゆれる。。

そこには
内向的で求道者のようなショパンは
いない。


全ての演奏に
深い洞察が感じられ
彼の内なる声が伝わってくる。

それは
楽器や
ステージのエネルギーに
インスパイアされた
今、ここでしか聴けない
奏者の心。




そして
アンコールで奏されたシュベルト。
とってもオドロオドロしくて怖かった(震
こんなに深い音が聴けるなんて。。


最後に演奏されたマズルカ!
土の香りをまとう歌
懐かしい風景

いつまでも
聴いていたかった。。



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この日は演奏の前に解説があったのですが
リッテルさんのレクチャーを聞きたかったな~。
と思うような、いや多くを語るまいwww

それから、リッテルさんが
アンコールの曲名を告げた時に着信音がが!
リッテルさんは音が消えるまで待ってから
演奏したわけですが(多分内心は・・
演奏中ではなくて良かったですが

あっ
だからシュベルトが
あんなに恐ろしかったのか!(え?





























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3VIOLIN CONCERTOS    [コンサートの記憶]

3大ヴァイオリン協奏曲と珠玉の小品集
          ~東京文化会館 大ホール

(出演)
ヴァイオリン:周防亮介

指揮:渡邊一正
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

(プログラム)
ベートーヴェン:ロマンス第2番 ヘ長調 op.50
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77

ラヴェル:ツィガーヌ
マスネ:タイスの瞑想曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64

サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン op.20
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35

(アンコール)
タレガ/ルジェロ・リッチ:アルハンブラの思い出






長尺を弾ききった
凄い集中力とエネルギーに
大喝采!!

美しい音色で奏でる
情感あふれる歌に
涙が止まらない。。



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周防亮介さんは
本当に高い演奏技術を持っていて
どんなに超絶技巧の作品も
難なく弾きこなしてしまう。
だから
演奏する姿は
気負いが全くなく
とても爽やか。
そして
その音楽も
さっと一筆で描かれた
水彩画のよう。

やわらかな色彩
繊細な濃淡

それは
言葉を紡ぐように
旋律を奏でる
周防さんの優しい心。。


もちろん
キメるところは
スパッと!
その小気味よさと言ったら。

そして
緩やかなシーンが
一転して熱気をはらみ
スパークする火花のように
駆け抜ける瞬間の
鮮やかなこと!!


周防さんが操る楽器、アマティは
包容力のある音色で
芯の強さがある。
ほんとうに
周防さんの音楽にぴったり!




それにしても
3つの協奏曲の間に
独奏曲を演奏するという
凄いプログラム!
聴く側は
この上ない贅沢なのだけど
演奏者は大変なのでは?
という心配をよそに
周防さんの演奏は
プログラムが進むにつれて
どんどん研ぎ澄まされていく!

指揮とオーケストラのサポートも
本当に素晴らしくて
音楽を創る悦びにあふれた
幸せな時間。。




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艶やかな音色で
華麗に弾いたメンコン!
これが今日の白眉だわ~
と思ったら
迫真のツィゴイネルワイゼンに胸熱♡
さらに、さらに
チャイコンときたらっ!
もう、最初のフレーズから
涙がうわぁ~ とあふれて

まさに異次元!
ブラボーとスタンディング・オベーション!
・・名演でした。



チャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルト。
この素晴らしい作品が生まれた地が
今、悲しみの中にいる。

周防さんのヴァイオリンは
彼の地ならではの
美しい旋律とハーモニーを
圧倒的な表現力で
生き生きと奏でる。


心の中で祈る・・
どうか
争いごとのない
穏やかな日が訪れますように・・




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そして、サイン会~♡
ステージ衣装のままの登場です~

周防さんは一人一人に丁寧に
「ありがとうございます!」
とお礼を述べています。
こんな大仕事の後なのに、長蛇の列~♡


私がサインを頂いたのは
アンコールで演奏された作品が入ったアルバム。


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パガニーニの24のカプリスの演奏会は行きましたが
ヴァイオリンの宇宙
このアルバムの作品の演奏会は行けなかったので(悲
お家で堪能しましょう~♬♫







ホールの外には
14番目の月。。


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ところで、この日の指揮者とオーケストラは
同じホールで昼も演奏会をしていたそうです(驚!
しかも、若手ピアニストが弾く協奏曲3曲!
体力勝負ですね~。
一体リハーサルとか、どんな進行になっていたのでしょう??

さらにっ(まだあるw
周防さんは
この前日も、翌日も
協奏曲の演奏会で弾いていた(ひー
これはサスガにどちらも1曲ですが(それが普通w
もう、常識があっさりと覆されて
あっけにとられるばかりでございましたw













































































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